あれは2017年の春のこと、確か3月か4月だっただろうか。リコーイメージングから突然送られて来たアンケート。求められたのは、第一に、当時発売されたばかりだったペンタックスKPについての感想。そして来るべきK-3Ⅱの後継機種についてであった。
「フルサイズ並のファインダー」
「秒間15コマ連写」
ほのめかされたのは、驚くべきそのスペック。そして問われた、「あなたは、それを欲するか」。APS-Cでありながらフルサイズ機並みの大きさを持つファインダー。一眼レフ史上、誰も到達してはいない秒間15コマという連写能力。まさに何者もが成し得ぬ前代未聞の“怪物”であった。
そんなものが実現すると言うのならば、実在すると言うのならば、登場すると言うのならば応えるしかないであろう。「欲しいに決まっている」……と。
……だが、一向にその全貌が明かされることはなかった。「リコーイメージングはK-3シリーズの後継機種、いや“進化形”を開発中である」。それ以上の情報は何ひとつなく、ただただ凡庸な日常が流れてゆくのみであった。
それどころか世界を暗雲が覆い始めていった。それも恐るべきスピードで。衰退する一眼レフ、台頭するミラーレス。そして急激に翳りを見せ始めるカメラ市場……。何年も前からその兆候はあった。だが、これまではギリギリ持ち堪えていたカメラ市場は目に見えて崩壊と没落の道を進み始めた。
そんな中で始まったミラーレス大戦。総力戦を繰り広げるソニーとキヤノン。終わりなき消耗戦、それはもはや勝者なき最終戦争ではないのか。そして一方では、オリンパスが売却され、ニコンにも赤信号が灯り始めた。かつてペンタックスが辿ったように……だ。
それだけではない。猛威を奮う新型コロナウィルス。世界中の街から人が消えた。灯りが失われた。失速してゆく経済、混乱を極める社会、蔓延するデマゴーグ……。真におそろしきは人かウィルスか。誰がこのような時代の到来を予期しただろうか。誰がこのような未来を予見しただろうか。そして人々の敬虔なる祈りと切実なる願いも虚しく、今もウィルスは世界を冒し続けている。
世界は変わった。あまりにも変わってしまった。どれだけの企業が、どれだけの会社が倒産の憂き目にあったのだろうか。どれだけの人々が生業と生計を喪なったのだろうか。……そんな先の見えない地獄の渦中にあって、「K-3Ⅱ進化系」の開発もまた遅れに遅れた。2019年9月、旭光学100周年イベントにおいて人々の前に姿を顕した「次期APS-Cフラッグシップモデル」の実動テスト機は「2020年発売予定」とされたものの、その詳細は伏せられたままで新情報もほとんどなく、スペックシートすらも知らされることはなかった。
つのるユーザーの不平と不満、高まってゆく不信と苛立ち、みるみる減退してゆく物欲……。2020年10月にもなって、ようやく「K-3 Mark Ⅲ」の名称とカタログスペックが公開。
フルサイズ並のファインダー。秒間12コマ連写。101測距点。手ブレ補正5.5段分。発売日は2021年2月末のCP+頃を予定、価格は20万円台後半との発表。しかし2021年2月にユーザーを待っていたのは「発売延期」の四文字……。難産を極めたペンタックスフルサイズ・K-1の時をも上回る発売延期となった。
その一ヵ月後となる2021年3月31日。もう桜も散り始めたその頃、ようやく人々の前にK-3 MarkⅢが姿を顕した。それは、あのアンケートから実に4年近くの歳月が過ぎた時のことだった。
羨望と垂涎の“7”
PENTAX K-3 MarkⅢ。その詳報を真っ先に伝えたのはやはり、ペンタックスを応援していることで有名な大阪のカメラ店、八百富写真機店様の記事であった。
聞けば八百富写真機店様は2017年9月の段階で、リコーイメージングのK-3 MarkⅢ開発責任者の方より、後のK-3 MarkⅢのコンセプトを聞かされるだけでなく、初期テスト機を見せられていたという。
キヤノンに7D MarkⅡというカメラがある。キヤノンとは言うまでもなく、カメラ界に覇を為し、その他を大きく突き放しているトップカメラメーカーである。そのキヤノンがラインナップしている高速連写機・APS-Cフラッグシップたるのが7Dシリーズであった。
Image Monsterと銘打つキヤノン7D。敢えて画素数を低めに抑える代わり、非常に高い高速連写性能を実現。もちろん動態追従オートフォーカスは業界トップクラス。その二代目たるMarkⅡが登場したのは2014年。そしていずれ来たるであろう「Canon 7D MarkⅢ」を仮想ライバルとして開発が進められたのが「PENTAX K-3 MarkⅢ」であったそうである。
自分も7D MarkⅡにはヨドバシカメラで何度も触れたことがある。そしてその度に驚かされた。その技術力の差に、その性能の差に。
Nikon D500と共に、APS-Cのフラッグシップ高速連写機として双璧を為す7D MarkⅡ。それに憧れて、このプロモーションムービーを何度観たか分からない。実際にヤフーオークションで7Dに入札したこともある。
ペンタックスのカメラが生成してくれる写真に不満はない、ないが。量販店で他社機に触れる度、その未来的なスペックと機能と性能、何より電瞬のようなオートフォーカスに打ちのめされてしまうのだ。これは7Dに限ったことではない。Nikon、SONY、FUJIFILM、OLYMPUS、Panasonic……。どのメーカーのカメラを試してもそうだった。
そして……ペンタックスのカメラが、あまりに時代遅れであることを痛感して、とても陳腐なものに思えてしまうのだ。なぜ、ペンタックスのカメラだけが“こう”なのだ。自分が一眼レフを初めて購入したのは2012年のことであるが、この9年間、ずっとその想いを抱え続けてきた。
圧倒的なまでの他社機の優れたオートフォーカスと連写性能、ただただ指を咥えて見ているだけしかできなかった。きっと、多くのペンタックスユーザーが同じだったと思う。だが、それも終わりを告げたのだ。信じて待ち続けた、その日々が報われる刻が来たのだ。そう、K-3 MarkⅢの登場によって。
〜たったひとつの冴えたやり方〜
ペンタックスが造り上げた高速連写機、動態追従オートフォーカスも非常に優れている――。そんな噂を聞いた時は、正直、眉唾であった。
確かにこれまでもアンケートで「Nikon D500やCanon 7D MarkⅡに並び立つようなカメラが欲しい」、そう書いたことはある。しかし、それはKマウントのシステム全体とも関わる問題であり、そのような日は訪れないと思い込んでいた。それにペンタックスは新機種を登場させる度にいつもいつも「オートフォーカスが速くなった、動き物にも強くなった」などとは述べてはいたが、他社機との絶対的な差は決して埋まってはいなかったからである。
それどころか、K-3 MarkⅢの登場までに何年も何年も待たされる中ですっかり購買意欲と興味を失ってしまい、正式発表当日も、とても醒めた目でTwitterのタイムラインを眺めていた。「あ、ふーん、出たんだ」。ちらりと価格を見れば、そこには28万円(リコーイメージングストア)という、高すぎる値段。
これならニコンD500のレンズキットを買って、何万円もお釣りが来る。同じく12コマ連写の最新フルサイズミラーレス、ニコンZ6とFTZアダプターのセットが買える。究極の一眼レフの一台であるニコンD850も買える。もちろん7D MarkⅡも買える。スチルだけでなく動画にもとても強いフジフイルムX-T4のレンズキットやパナソニックDC-S5Kレンズキットも買える。そう、K-3 MarkⅢの価格設定では、信頼と実績ある他社機がよりどりみどり、選び放題だったのだ。
ペンタックスと言えば、AFスピードでは他社に一歩も二歩も劣るものの、小型軽量で高い画質を安価に提供してくれる、コストパフォーマンスにとても優れたカメラというイメージがあったし、それこそが、それだけがペンタックスのセールスポイントであったはずだ。それがここに来て大きく変わってしまった。ペンタックスは変わってしまった。だが、薄利多売ではなく厚利少売の戦略こそが非常に大切であることも理解している。それでもどこか、失望感と寂寥感は拭いきれなかった。ペンタックスは遠くへ行ってしまった。
これもまたアンケートには「ペンタックスはもっと値段を上げていい」などと自分で書いたことがあるのだが、ここまで高くなるとは思ってもみなかった。せいぜい19万ぐらいだろう、と高を括っていた。
28万円という値段は、最強のAPS-C高速連写機たるNikon D500の初値とほぼ同等であったのだが、だとしてもD500を買えばいいという結論にもなってしまう。あまりに間違いのない選択である。普通はそちらを選ぶし、自分もそちらをおススメする。
対するPENTAX K-3 MarkⅢ。今時の一眼レフと比べても、オートフォーカスも連写能力もさほど見るべき所はない。もちろん最新鋭のミラーレスとは比較するのもおこがましい。もはやオートフォーカスは数百の測距点を有していても驚かず、連写については秒間20コマや30コマも当たり前になりつつある。ペンタックスのお家芸であったはずの手ブレ補正だって、5.5段程度ではもはや真新しくも何ともない。間違いなく、一眼レフの時代は終わりつつある。
第一、ペンタックス自身もまた、その連写能力やオートフォーカスにはほとんど触れることなく、ただただ光学ファインダーの素晴らしさばかりを喧伝する。それしか売り所がないのか……ッ!
そんな訳で、2020年10月の時点ですっかりK-3 MarkⅢには興味を失ってしまっており、「自分にはK-1さえあればいい。K-1Ⅱの後継機さえ出てくれればいい」と思うようになっていた。そう考えているペンタックスユーザー・ペンタキシアンも少なくないと思う。
「試される信仰心」
「一眼レフへのレクイエム」
「One Last "K"」
「"本気"と"限界"」
「旭日か、落日か」
K-3 MarkⅢについてはそんな風に考えていた。せめてあと2年早く出ていれば、随分と気持ちは違ったかもしれない。
それだけではない。評価と評判の高い「ペンタックス・ステイトメント」についても自分は「ああ、これは『どうやっても他社には勝てません。追いつけません。なので一眼レフで行きます。行くしかありません』という敗北宣言でもあるんだな」などと、どこか冷ややかに受け取っていた。そしてそれが、カメラ受難の時代においてはたったひとつの冴えたやり方であり、唯一の生存の道であると。仕方のないことだとも分かっていた。
……しかし同時に、K-3 MarkⅢを諦めきれない想いもあった。
ペンタックスの画作りは世界最高である、そう信じている。あれだけの色再現、あれだけの高感度耐性、あれだけのダイナミックレンジ。あれだけの高画質を達成してくれるメーカーは他にはない。5年前、K-1を手に入れた時、ハッキリ確信した。
実は他社のカメラを購入したことも何度かある。だが、どれも自分の満足ゆく画は出してはくれなかった。目の前の景色を撮影し、背面液晶を見る度に「違う、違うのだ。目の前の景色はこんな色でもなければこんな光でもないのだ」と思ってしまうのだ。いつしか自分はペンタックスでなければ、そしてK-1でなければ満足できない身体になってしまっていた。
「ペンタックスを、応援したい」
そう思う心は捨て切れなかった。
〜覚醒の”K”〜
K-3 MarkⅢを購入してペンタックスを応援したい。だが、どうしても決断ができない。というよりも、すっかり気持ちが涸れ果ててしまっており、心がまったく動かないのだ。長く待ったというのもそうであるが、コロナ禍の影響もかなり大きい。自粛疲れではなく、写真を撮りに出歩かなく(出歩けなく)なった生活にすっかり心と体が順応してしまい、写真への意欲そのものがすっかり抜け落ちてしまっていた。さらに言えば、今年の春は車検と自動車税で25万円が吹き飛ぶことが確定していた。
何よりもK-3 MarkⅢの性能について、大きな不安があった。高感度の強さには興味はあったものの、今や自分はK-1でしか満足できない身体。この弊害はペンタックスシリーズにも及んでしまっており、KPが発売した時も、その高感度耐性には驚かされたものの、フルサイズとAPS-Cというクラス違いから来る画づくりのレベルの違いに、どうしても物足りなくて死蔵に近い形となってしまった……ということがあったのだ。KPが悪いのではない。K-1が素晴らしすぎたのだ。今でも初心者にペンタックスを薦めるならKPをおススメする。……生産終了になってしまったが。
28万円という値段。開発と製造に掛かった時間と人手とお金、工作における精度と難易度。それらを鑑みれば、この価格はおそらく安いのだろう。いや、間違いなく安い。しかしカメラというのは写真を撮る機械であり、実用の道具である。その値段に見合う性能と描写力があってくれなければ困る。ペンタックスはライカではないのだから。
その点、リコーイメージングは光学ファインダーの素晴らしさを訴えるばかり。光学ファインダーが素晴らしいのは十二分に理解できるし、開発が極めて難航したのも窺える。しかしファインダーそのものは画質には何ら影響しないのだ。どうなのだ? K-3 MarkⅢは。K-1 MarkⅡをも上回る高画質を達成しているのか? 他社に比肩する程の即応性と速射性、動態性を有しているのか? その価格に説得力はあるのか?
PENTAX K-3 MarkⅢには本当に買う価値があるのか。画づくりはもちろんだが、その連写能力やAF性能についてもかなりの不安がつきまとった。APS-Cと言えばGR3も所有しているが、コンセプトが明確であったので、かなり出番は多い。しかし一眼レフということで、どうしてもK-1と用途が被るのがK-3 MarkⅢ。28万円も出したのに満足できず、がっかりしてしまうことが恐ろしかった。K-3 MarkⅢは自分に新しい世界を見せてくれるのか。それとも、それなら他社を選んだ方が正しい選択なのか。そもそも他社機で欲しいと思えるものも最近はないけれど。
K-3 MarkⅢについて取り上げたレビューサイト、ブログ、雑誌等もかなり読み漁った。だが、書いてあることはどれも同じ。光学ファインダーの素晴らしさばかりが強調されて、それ以外の画質面、連写性能、オートフォーカス性能についてはほとんど触れられてはいなかった。
そんな中で一本の記事が見つかった。八百富写真機店様による実写レビュー記事である。
今回もペンタックスの新機種は、関西の桜の時期にはまったく間に合わなかったのであるが、こちらの記事では桜の名所・吉野を撮り歩いていてうらやましい限り。だが、桜以上に目を引いたのは鉄道の写真にあった。この中に、高速連写と動態追従オートフォーカスをテストした旨の作例とテキストがある。曰く、
「時速100+アルファkmで迫ってくる特急列車に対し、運転士にフォーカスを合わせた所、フォーカスが合い続けた。1コマだけ外れたが、次のコマでは再び食いついた」
……これはもしかすると、もしかしてなのでは? ペンタックスはついに他社に追いついてみせたのでは?
動態追従AFの問題はボディのみに起因するものではなく、レンズ側の問題も大きいという。ペンタックスがニコンやキヤノンのそれに追いつくには、既存のレンズを全て一新する必要があるのでは……と思って、長らく諦めていた。一昔前ならば、「ペンタックスがキヤノン7D MarkⅡ(Ⅲ)の対抗馬を出す」などと聞いた暁には失笑しただろう。
だが、4年の歳月を経て。ペンタックスの技術者たちの苦心と情熱はひとつの結実と完成を見せたのでは? 他社のような電光石化のレスポンスを獲得したのでは? Kマウントはついに覚醒の刻を迎えたのでは? そう感じさせる作例だった。
というか忘れていた。ペンタックスはせっかく搭載した機能も、あまり自信がないとだんまりで宣伝しないのだった。K-3(初代)にちゃっかり載せていたパープルフリンジ低減機能とか。DA☆55のエアロブライトコーティング(ニコンが大々的にブランド化したナノクリスタルコートと同様のものでる)とか。まったく、いつもいつも妙に謙虚なメーカーである。もうちょっとキヤ……某メーカーのように、ファインダー視野率97%でも100%と言い切るぐらいの図太さが欲しい。もうちょっとキヤ……某メーカーのように、秒間nコマ連写!(ただし開放値に限る)ぐらいに喧伝する割り切りが欲しい。……だからこそ、ペンタックスは愛されキャラではあるのだろうが。
〜thirwice upon a time〜
何にしても、実物を見てみなければ何とも言えないのは確かである。そしてリコーイメージングも短期間・短時間ではあるがタッチアンドトライを開催する運びとなったので、リコーイメージングスクエア大阪にて申し込んだ。
【光学ファインダー】
「フルサイズ並のファインダー」という触れ込みではあったが、さすがにフルサイズと比較すると小さくはある。APS-Cとしてはかなり大きいものの、K-1ユーザーであるならば、広さ大きさという点ではあまり驚かないかもしれない。
敢えてメガネを装着してファインダーを覗いてみると、確かに像は大きく倍率は高いのだが、どうにもこうにもケラれる感じでファインダー像は見づらい面もある……というのが正直な所。数年前に八百富写真機店様が試作機のファインダーを覗いた時、その像の大きさに気が付かなかったとのことであるが、それも何となく頷ける。なお、K-1のファインダーも改めて覗いてみたが、そちらは何も問題なし。645Zも然り。フォーマットの大きさは偉大である。
しかし、像のクリアさについてはK-3 MarkⅢの方が上だ。もう少し細かく言えば、ファインダー像の解像感とでも言おうか。被写体の細部までK-3 MarkⅢはかなりハッキリ見える印象である。K-1はもちろんα900、D500、LX等々、あれこれファインダーを覗いたことはあるが、コストを掛けたファインダーはこんなにも変わるものなのかと驚いた。
【シャッターフィール】
シャッターフィールについては色々と意見や感想を聞くが、自分個人の印象としては、歴代K-3のそれと同じである。ソフトながらも硬質感や金属感が含まれた芯のあるシャッター音、それがK-3シリーズのシャッターフィールであったのだが、今回のMarkⅢもそれを踏襲している。K-3、K-3Ⅱのシャッターフィールを純粋に高速化したものだ。
また、秒間12コマ連写というのはニコンのフルサイズフラッグシップであるD5と同等であるが、D5のような機関銃、兵器めいたフィール、ユーザーを驚かせるような「やかましさ」は一切ない。K-3 MarkⅢは柔らかさと優しさ、そして俊敏さが融合したシャッターである。
【連写】
秒間12コマ(AF-C時11コマ)とのことで、バッファがどうなのかとはよく言われる。シャッターボタンを押しっぱなしにすると、どうしても書き込み速度の問題で連写速度が落ちる。だが、UHS-Ⅱ対応によって書き込み速度が向上している為、少しインターバルを置けばすぐにバッファは回復する。K-1やKPではなし得なかったことである。
連写→ちょっとインターバル→連写→ちょっとインターバル→連写、というリズムで撮影すればバッファが詰まることはなく、バッテリーか記録メディアが尽きるまで永遠に撮影ができる。ある意味では現実的な使用方法に則したバッファ設定であるとも言えるかもしれない。
【オートフォーカスのスピード】
動態については試せてはいない。また、当然ではあるが歴代のペンタックスの中では最も速い。ただ、レンズによって非常に大きな差が出る。K-3 MarkⅢのAFスピードの恩恵を最大限享受できるのは、おそらくHD DA55-300mm 3.5-6.3 PLMぐらいではあるまいか。
55-300が速い分、DA18-135mmだと、むしろ遅くなったのでは?と思える程だった。さらに言えば、DA16-85mmとDA18-135mmではかなりの差異がある。何にせよK-3 MarkⅢを買うのならば、55-300mm PLMはマストバイである。繰り返す、マストバイである。
なお、ボディ内モーター駆動のFA43mm Limitedで試した所、AFを前後させて迷うような挙動がほぼ消えており、AFはかなり速くなっていた。DCモーターやSDMのレンズも同様(※あくまでペンタックス基準で)
初動の食いつきで迷いがない。これまでだと一発ではAFが決まらなかったような被写体でも、きちんと食いついてくれる。とは言え、初動の速度は、やはり他社に比べると、まだまだ改善の余地があることも否めない。
何にせよPLM搭載のレンズの拡充が急務だと感じる。特に標準域でスピードを活かせるレンズが皆無である。HD DA★16-50mm F2.8を早く! それと18-135mmのリニューアルを……!
【画づくり】
色再現には何の問題もない。KPだと色が抜けてしまうような被写体でも、きっちり色が乗ってくれる。これはありがたい。
低感度、高感度ともに描写が上がっているというが、これは背面液晶だけではなかなか分かりづらい。だが、解像感は大きく向上しているのは非常によく分かった。解像感という意味ではフルサイズ3600万画素のK-1と同等、いやそれ以上ではないかと思わせられる。もはやAPS-C2500万画素の解像ではないし、手持ちリアレゾが省かれた理由も十分に納得ができる。
これはおそらくファインシャープネスⅡの賜物であると思われる。また、スクエアのスタッフの方の説明では、裏面照射型センサーを採用したことも大きいのではとのこと。単純な画素数ではないくイメージセンサーの構造そのものの進歩による恩恵とも言えそうだ。
解像感の劇的な向上。これこそがK-3 MarkⅢの最大の特徴なのではないかと感じさせられる。これがこれからのペンタックスのスタンダードになると思うと、思わず武者震いもしてしまう程だ。
……等々、という感想であった。もちろん、これらはごくごく限られた時間、ごくごく限られた空間で試してみて感じたことに過ぎないので、実際にフィールドに持ち出してみなければ真価は分からない。
K-3 MarkⅢについて、大絶賛するのは簡単であるし、逆に欠点をあげつろおうとすれば、それもまた簡単である。非常に、非常に悩ましいカメラである……。これはどんなカメラにも言えることではあるし、歴代ペンタックスの全てに言えることではあるのだが。
そして何人ものユーザーが数ある他社機を選ばず、敢えてペンタックスを選び続けていること。どうか、どうかリコーイメージングの方々には汲んで頂きたい。全てはペンタックスを愛するが故だ。
何にせよ。ペンタックス・ステイトメントなるものに準じた次回作……すなわちPENTAX K-1 MarkⅢを早く作って貰わなければならない。むしろそれこそが大本命である。個人的にはK-1のレスポンスをもっと良くして頂ければそれで十二分であるのだが。スリープ状態からのびっくりするぐらいの復帰の遅さだけは真剣に何とかして欲しい。
PENTAX K-3 MarkⅢ。其は再び昇らんとする旭日の福音となるか。潰えんとする一眼レフの希望の光となるか。
それとも――
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