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ペンタックスを使う理由とは、そして現代における一眼レフのメリットとは

更新日:2022年3月25日


(PENTAX K-1 / DFA 28-105mm F3.5-5.6 DC WR / 沖縄、古宇利島オーシャンタワーより)


※この記事に掲載されている写真は全てjpeg撮って出しそのままとなっています。一部、水平の調整を除き、サードパーティのソフトウェアによる現像・色彩の調整等は一切行っていません。ペンタックスの画づくりそのままのものとなっています。



 自分が生まれて初めて自分の一眼レフを購入したのは2012年春のこと。中古でペンタックスK100Dを手に入れたのが全ての始まりでした。以降、ペンタックスの一眼レフを使い続けて10年になります。


 社会人になった頃にはフィルムというものはすっかり衰退してしまっており、自分にとってフィルムカメラというものは子供の頃に親から渡されたポラロイド機や、写るンですをちょっと使った程度。ああ、「写るンですはカメラじゃない!レンズ付きフィルムだ!」とかいう突っ込みは誠に申し訳ないのですが、ちょっと横に置いといてください。


 一応、フィルム機は初代ペンタックス645だとか、ニコンSとかバルナックライカとかM型ライカだとかGマウントコンタックスとかも手元にあるのはあるのですが、正直そこまでフィルムカメラというものに興味がある訳でもなく……。昨今やたらと持て囃されるオールドレンズだとかレトロカメラといったものに物欲や関心、おもしろみやありがたみを覚える訳でもない。自分はそういう世代の人間であるし、基本的に不信心かつ不熱心な人間です。

(PENTAX K-5Ⅱs / DA18-135mm F3.5-5.6 DC WR / 貴船神社にて)


 何にしても、カメラや写真という世界において自分がまだまだ若造なのは確か。デジタル一眼レフを10年使った程度で何が分かるのかと言われれば、まあその通りなのですが、そんな自分でもハッキリと分かることはあります。それは『今、カメラ業界がとんでもない危機的状況にある』ということ。そして中でも『ペンタックスは特に危ない』ということです。


 ペンタックスと言えば現代にまで続く一眼レフの基本形を造り上げたパイオニアであり、フィルムカメラの時代にあっては一眼レフの王者として君臨していた時期もあった……と言うのは聞いています。しかし今やそのペンタックスは青色吐息。いや、存亡の危機に瀕しているとさえ言えるでしょう。


 現代のカメラ界におけるペンタックスのシェアがどのぐらいのものなのか……。確か2015年頃は6%ぐらいあったような気がするのですが、たぶん今はどれだけ高めに見積もっても3%とかその程度なのではないでしょうか。かつてトップシェアを誇ったブランドが今やどうしてこうなった……


 それもそのはず。ヨドバシカメラで色々なメーカーのカメラを使い比べてみれば嫌でも分かります。いかにペンタックスが時代遅れのカメラであるかということが。自分もこの10年、ヨドバシカメラ京都に行く度に、他社との圧倒的なスペックの差……とりわけオートフォーカスの性能の差には打ちのめされるばかりでした。


 カメラに興味がある、という友人知人をヨドバシカメラに連れてゆく。まずペンタックスのエントリーモデルを触らせてみる。すると「これ、ええやんか!」とは言ってくれる。しかしその後、ニコンやキヤノン、ソニーのエントリー機を触ってみると、そのオートフォーカスのスピードにびっくり。「やっぱりニコン/キヤノン/ソニーの方がいいや」と言われてしまう。そんな経験は数知れません。どれだけ、どれだけ悔しかったことか……ッ!


 話はオートフォーカスに留まらず……。昨今のデジタルガジェットの進化において、数多くの機能性やスマートフォンとの連携システム等々……。あらゆる面でペンタックスは時代遅れ、周回遅れとなってしまっています。正直、今後どれだけペンタックスが頑張った所でもう追いつけない所まで来ていると思っていますよ。今のリコーイメージングには企業体力的な意味で、そこまでの開発リソースはないでしょう……


 ……そんな時代の流れにあって、自分は常にペンタックスの一眼レフをメインの機材として使い続けてきました。もちろん他社のデジタル一眼レフやミラーレス機を購入したこともあります。ですが、何故か自分はペンタックスの一眼レフでなければ満足できなかったのです。パーフェクトという意味での満足ではないかもしれませんが、少なくともペンタックスの一眼レフでなければ納得できなかったのです。


 なぜ、ペンタックスなのか。なぜ、ペンタックスを使うのか。ペンタックスを選ぶことに何かのメリットはあるのか。ペンタックスに、他社機に対するアドバンテージはまだ残っているのか。それを改めてきちんと考えてみたいと思います。


ペンタックスを使う理由

(PENTAX K-1 / DFA 28-105mm F3.5-5.6 DC WR)


 自分がペンタックスを使い続けている理由、ペンタックスのメリット、ペンタックスの持つアドバンテージ。それは次の二点に集約されると感じています。


・画質が良い

・レンズが良い


 カメラとしてはあまりにも基本的なことですが、意外なことにペンタックスは画質も良ければレンズの造りも良いのです。もちろんこれは他社機と撮り比べて感じたことです。ああ、オートフォーカスについては諦めています。それについてはもはや他社と勝負にならないので、電瞬の高速オートフォーカスが欲しいとか、瞳AFが欲しいとか、動態追従AFが欲しいとか、そういうのは他社の方が絶対的に良いですはい。比較するのもおこがましいです(悲哀


 オートフォーカスの話はさておいて、まず一つ目の『画質』について。そもそも画質って何ぞや?という命題においては色々な意見があるとは思いますが、概ね次の三つに整理されるのではないでしょうか。


・色再現

・高感度耐性

・ダイナミックレンジ


 この三つのバランスがペンタックスはとても高いレベルで実現されていると感じています。もう少し嚙み砕いて言うと『画づくりの素晴らしさ』であるかもしれません。


 なお、上記の中には敢えて解像力や画素数というものは外してあります。中には画質=解像力であるという主義の方もいらっしゃるかもしれません。が、最近は画素数こそが、解像力こそが絶対正義と主張される方は最近はあまりお見受けしないように感じます。

(PENTAX K-1 / DFA 28-105mm F3.5-5.6 DC WR / 伏見稲荷、千本鳥居)


 結局のところ、画素数をいたずらに増やしてみたところでS/N比が悪化するだけで、低感度だけでしか使い物にならないカメラになってしまいますし。そういうのは使用できるシチュエーションを限定しまくるだけであって、結果として使い所のない必殺技と同じです。5000万画素クラスのキヤノン5DsRやソニーのα7RⅣ、はたまたシグマのSDクアトロあたりが覇権を取れていないのは、その為でしょう。α7RⅢからα7RⅣに買い替えたものの、なんだか微妙な感じのコメントをしていた友人を思い出します。APS-Cだと2400万画素、フルサイズだと4000万画素あたりが画素ピッチ的には限界なのではないでしょうか。


 もちろん中には『フィルムの時代はISOだのASAだのは変更できなかった! 贅沢だ!』とか激しく主張される方もいらっしゃるかもしれませんが、今はそういう話はしてないですし、そういう時代でもありません。


ペンタックスは意外と画質が良い

(PENTAX K-1 / DFA 28-105mm F3.5-5.6 DC WR / 伏見稲荷、千本鳥居)


 それはさておき、画質の話。まずは色再現について。この伏見稲荷の写真、もちろんjpeg撮って出しのものです。何てことない普通の写真なのですが……意外とこういう色再現をしてくれるカメラというのは少ないのです。


 ホワイトバランスの関係上、上記のようなシチュエーションでは『画面全体が赤すぎる!』とカメラが自動で判断してしまい、補色としてブルーを被せて来ることが多いのです。すると鳥居の朱色は色が抜け落ちて薄くなってしまい、石畳の灰色は青みがかって写ってしまう。結果、現実の色とは大きくかけ離れた写真になってしまうことがとても多いのです。


 そこをペンタックスのカメラはきっちりと色を再現してくれる。オートホワイトバランス任せのままでも大丈夫です。ペンタックスK-1が発売された翌日、ファーストショットとしてこの写真を見た時に『これは凄い』と思わされてしまいました。自分がペンタックス以外のカメラが(もうちょっと言うならK-1以外が)使えなくなってしまった最大の理由はこれですね。


 ちなみにペンタックスでも、K-5Ⅱs(2012年発売)までは上記のような色の抜けや色被りが起きていました。割と最近の他社のミラーレス機でも同じことが起こります。画づくりが良いと言われている某社のカメラとか、あるいは別の某社のカメラとか。もちろんそれはそれで昔ながらの18%グレーの概念に則ったホワイトバランスの取り方なので、メーカーの思想や主義によるものであるのかもしれませんが……。しかし従来のやり方のままだと、昨今のスマートフォンの方がその辺の色のバランスの取り方が上手くなってしまってもいますね。


(PENTAX K-1 / DFA 28-105mm F3.5-5.6 DC WR / 伏見稲荷、本宮祭)


 ペンタックスの画質の良さ。二つ目に挙げられるのは高感度耐性があります。分かりやすく言ってしまうと、暗所や夜間で感度を上げても、比較的クリアな画が撮れるということですね。


 自分は京都で写真を撮ることが多いのですが、京都の寺社仏閣は暗所が多く、さらに山間部に建立されていることもかなり多い為、日中であってもISO800・F2.8・SS1/60ぐらいがスタートになってしまうことは珍しくありません。おまけに京都、人が多いので三脚なんて立ててられません。京都のカメラ屋の店員さんが『ジッツォのカーボン持ってるんですけど、使う場所がないんですよぉ……』なんて仰ってたのが懐かしいです(笑)


 感度を上げてゆくと、まず全体的にノイズが乗ってくる。さらに色再現もおかしくなるし、ハイライトとシャドウの階調表現(ダイナミックレンジ)も狭くなってしまい、画質が著しく低下してしまう。特に画素数を詰め込みまくったカメラはその傾向が顕著になってしまいます。


 自分がK100Dというカメラを初めての一眼レフとして選んだのも『K100Dは画素が600万画素と低めに抑えられており、ノイズが少ない画が撮れる』と本で読んだからでした。もちろん当時、既にK-5という高感度に強いカメラが登場していたので、そちらを選べばもっと間違いがなかったのですが、その辺はまだ初心者も初心者だったもので……


 ただ、いずれにせよ。他社に比較してペンタックスが高感度に強い画づくりを続けてくれている。これもまた自分がペンタックスを選択している大きな理由の一つです。


(PENTAX KP / HD DA20-40mm F2.8-4 Limited DC WR / 伏見稲荷、山頂付近にて)


 ISO25600という超高感度、それもjpegそのままでこれです。ちなみにこの写真ですが肉眼だとほぼ真っ暗で、特に狛狐のシャドウの部分は何も見えないぐらいの暗所でした。地上の光の届かない信仰の山、その頂上。そこをペンタックスKPは見事に写し出してくれました。


 石の質感と言い、ハイライトとシャドウのグラデーションや階調表現と言い、前掛けの赤い色と言い、ここまで写れば文句の付け所はないでしょう。『高感度のK』のキャッチコピーに偽りなし。それでも敢えてケチをつけるなら、全体的にちょっと緑がかってはいますけれど、山の中で緑の樹々に囲まれていることを考えたら正解なのかもしれません。某社のミラーレスだとブルーが被りましたね。

(PENTAX K-5Ⅱs / シグマ18-50mm F2.8 EX DC / 貴船神社への参道にて)


 また、京都では春夏秋冬あちらこちらでライトアップが行われることが多く、夜間に撮影に出かけることも多いのです。なので自分の場合は高感度に弱いカメラはその時点で選択肢から外れてしまうのです……。そしてその中では手ブレ補正の性能も超重要です。


 とは言え、ペンタックスが手ブレ補正に強かったのも今は昔。もちろん現代でも十分優秀なのですが、昨今はボディ側とレンズ側の両方からの補正が行われるようになりつつあり、まだまだボディ側でしか補正していないペンタックスは、単純な補正段数で言えば他社に遅れを取りつつあります……。645ではレンズ側手振れ補正を実現していたりもしますし、そろそろ手振れ補正にも変革と革新が欲しい所。切実です。

(PENTAX K-5Ⅱs / DA18-135mm F3.5-5.6 DC WR / 貴船口駅付近にて)


 『そんなに高感度耐性が欲しいなら、ソニーのα7Sでも買えばいいじゃないか!』と言う声が聞こえてきそうですし、実際にその通りな気はします。……が、自分は雨や雪でも撮りに行くことが多いので、その時点でソニーさんは選択から外れてしまうのです。室内でしか撮らない、晴れた日しか撮らないと決めているのであれば、自分もソニーのα7シリーズを使うと思います。それぐらいα7シリーズはバランスの良いカメラです。文句の付け所などあろうはずもありません。ソニーに信頼のおける防塵防滴性能が付与されたら、自分もα7シリーズに持ち換えるかもしれません。ソニー……信頼……


 雨や雪でずぶ濡れになってもきちんと作動してくれる耐環境性。優れたフィールドカメラとして、こういった所でもペンタックスを選んでいる理由があるのです。『フィールドカメラって言うなら、ニコンやオリンパスだって素晴らしいぞ!』という御意見もよーくよーく承知しております。て言うかその二社、両方とも持ってます。でも使ってみた所、画づくり(特に色再現)という面で今一つしっくりと来なかったのです……


 ニコンは全体的に色が……ですし。オリンパスはマイクロフォーサーズということで高感度もちょっと……ですし。両方とも道具として、メカとしては本当に好きなのですけれどね。ニコンの一桁機のシャッターフィールとか世界最高じゃないでしょうか。オリンパスも軽量小型でハイレスポンスなシステム体系とか素晴らしいですよ。個人的にはD850でK-1の画が出てくれるのが理想です(叶わぬ夢


 ……でも。シャッターを切って背面液晶に写った画像を見て『これだ』と思わせてくれるのは、自分の中では今の所ペンタックスだけなのです。


(PENTAX K-1 / DFA 28-105mm F3.5-5.6 DC WR / 鞍馬山にて)


 そしてペンタックスの画質の良さの三つ目として、ダイナミックレンジの広さがあります。ダイナミックレンジとはつまり、明るい箇所と暗い箇所を同時に捉えられる性能。逆光で撮影した時など、明るい部分が白く飛んでしまったり、逆に暗い部分が黒く潰れてしまうのは、このダイナミックレンジの狭さに起因するものです。


 ダイナミックレンジはEVと呼ばれる単位で表され、人間の肉眼はおよそ16.5EVだと言われています。対して一般のデジタル一眼カメラでは11〜12EVがせいぜいなのですが、K-1においては14EVを達成しています。


 上の写真は鞍馬山の山中で写したものですが……日陰になっている部分のなだらかな表現。もちろん日光が当たっている部分の階調も失われていません。他社のカメラだと、影の部分がベッタリと潰れてしまって、これまた肉眼とはかけ離れた画になりがちなのです。もちろん、それはそれでコントラストの効いた写真に仕上がって味があるのですけれど。


(PENTAX K-1 / シグマ 8-16mm F4.5-5.6 EX DC / 雪の清水寺にて)


 こちらは逆に、日なたの部分。白い雲、白い雪。ペンタックスK-1は見事にそのグラデーションを描き出してくれました。立体感も抜群です。おまけにこの空の青さの色再現。ペンタックスを買って良かったと、つくづく思えた撮影でした。この日は一日中、雪に降られていましたしね。


 ダイナミックレンジについては、人間の肉眼というものはなかなか優秀で(左右に目があるとか、脳で合成処理が行われているとか色々あるでしょうけれど)、人間の眼が捉えられるダイナミックレンジと比べると、デジタルカメラはまだまだその域に達してはいません。


 一方で、昨今はスマートフォンの画像処理ソフトが恐るべき進化を遂げており、最新のApple iPhoneやGoogleのPixelシリーズなどは、夜景であっても驚くほどにクリアな画像を生成してくれます。もちろんそれらはハードウェア的なものではなく、ソフトウェアで無理やり作り出した画像ではあるのですが、ぱっと見で綺麗な写真が出るってやっぱり大事だと思います。そりゃみんなスマホで撮りますよ。


 ダイナミックレンジという点において。ハードウェア的な面では各カメラメーカー、特にペンタックスは大健闘していると思います。ですがソフトウェア的な面ではかなり遅れを取っている(メーカーの思想や哲学の違いも大きいでしょうけれど)とも思っています。今の写真はゴテゴテの加工しまくりでも『盛れて』なんぼですからね……。そういった若い人たちのニーズを踏まえて、これからカメラメーカーはどうその辺の折衷点を見つけてゆくのやら。


ペンタックスは意外とレンズの造りが良い

 次にペンタックスを使う理由で、画質以外の面において。あれこれ使っていると、ペンタックスのレンズって意外と良く出来ているなと思うのです。ああ、ここでもオートフォーカスの話はちょっと置いといてください。悲しくなるので。


(PENTAX KP / HD DA20-40mm F2.8-4 Limited DC WR / 伏見稲荷の山中にて)


 レンズの良さって何だろうと言われると色々あると思うのですが、一つには逆光耐性の強さがあると思います。ペンタックスのレンズはこの逆光耐性が本当に優秀だと思います。


 この上記の写真。LEDの強い光が差すシチュエーションなのですが、フレアがこの程度で済んでいます。『いやガッツリ出てるじゃないか!』と仰るのも分かるのですが、この時、実は他社のミラーレスとそこそこ高額な新しめの単焦点レンズを持って行ってたのですが……そっちで撮った写真のゴーストやフレアはこんなもんじゃ済まなかったです。


 ペンタックスのレンズだと当たり前に撮れてしまう写真って、実は他社のレンズだと当たり前に撮れなかったりするんですよね。逆光耐性はもちろん、歪曲が酷かったり、周辺減光が物凄かったり……


(PENTAX K-1 / DFA 28-105mm F3.5-5.6 DC WR / 伏見稲荷、四ツ辻より)


 これは伏見稲荷の中腹から夕景の京都を撮った写真です。逆光耐性、めちゃめちゃ強いと思いませんか……? それに加えて空の色合いや雲の階調、はたまた手前の樹木の影の部分まで。どこを取っても、きっちりかっちり映し出してくれている。そしてこれは便利ズームの写真です。もちろんフォトショップとかは一切使っていませんゆえ。


 驚くほどのヌケの良さ。古くからレンズのコーティングにはコストを掛けまくっていたというペンタックス。スーパーマルチコーティング、つまり多層コーティングを世界でも先駆けただけはありますね。このレンズに使われているのは、smcの上をゆくHDコーティング。本当はさらにこの上にエアロブライトコーティングや、エアロブライトコーティングⅡという技術もあります。 


 ……なお。この写真も現代のスマートフォンで撮ると、影になってる部分まではっきりと明るく撮れてしまいますけれどね……

(PENTAX K-1 / DFA 28-105mm F3.5-5.6 DC WR / 伏見稲荷、四ツ辻より)


 これも同じ日、同じ時に撮った写真です。先程のはワイド端、こちらはテレ端……だったかな? こちらもまたヌケの良さ、逆光耐性の素晴らしさがよく分かると思います。


 『そんなこと言うたかて、フルサイズ用のコストの掛かったレンズでっしゃろ?』と仰る気持ちもそれなりに分かるのですが、ペンタックスってAPS-C用の便利ズーム、10年以上前のsmc時代のレンズでも逆光耐性の良さは相当のものです。たぶんそんなに見比べても違いが分からないですよ。


 かつてDA18-135mm F3.5-5.6 DC WRというキットレンズな便利ズームで、同じくこの場所から夕景を撮ったことがありますが、そちらもまたゴーストやフレアがほとんど見られないヌケの良い写真が得られました。当時、そういった写真があまりにも当たり前に感じていたのですが……他社のレンズを使ってみると、案外そうでもなかったという。ペンタックスって安いズームレンズでも本当にきっちり作り込んでくれるのです。良心に満ちたメーカー、ブランドだと思いますよ。

(PENTAX K-1 / DFA 28-105mm F3.5-5.6 DC WR / 沖縄、美ら海水族館より)


 そしてペンタックスのレンズの造りの良さについて。これは写りそのものとは直接関係ないのですが、レンズそのものの造りが安っぽくないというのがあると思います。


 これもペンタックスのレンズばかりを使っていると気がつかないのですが……。他社のレンズ、特に安いレンズって鏡胴の造りがペラペラペタペタ、スカスカスコスコのプラスチックで、超絶安っぽいんですよね。100円ショップの製品でももうちょっと良いプラスチック使ってないかな?というぐらいで。特に昨今のミラーレスカメラはこの傾向が酷いですね……。割といいお値段するようなレンズでも『オモチャでは……?』ってなったりしますよ。


 特にマイクロフォーサーズ勢とかが顕著なのですが。高いレンズは鏡胴もしっかりしているし、リングを回した時のトルク感も素晴らしい。まさに職人気質なレンズを味わうことができます。でも安いレンズはとことん安っぽく作ってあって……どう考えてもペンタックスQのトイレンズの方がマシでは……? と愕然とするのですよね。


 ペンタックスのレンズ群。アルミ削り出しのリミテッドレンズや、高級路線のスターレンズは特別としても。キットレンズや便利ズーム、安価な単焦点レンズなどなど、値段に比して品質が高い。クオリティが高いんですよね。デジカメinfo風に言えば『ハイクオリティなプラスチック』ですか。


 リングやダイヤル、各スイッチ類など……。レンズはもちろんボディでも、しっかりとした押し応え、操作のし応え、フィーリングがある。安いレンズ、安いカメラであっても手を抜かない。ペンタックスの愚直な物づくりが、こういった所でも見えてきます。メーカーによっては、何万もするような製品でも、その辺の操作感が息してなかったりしますから……どことは申しませんけれど。


 『言うて安いレンズなんだし写りにも関係ないんだから、鏡胴なんてとことんコスト下げればいーじゃん』って言う意見もあるかと思いますが、とにかくペンタックスは安いレンズであってもきっちり手間暇とそこそこのコストを掛けて作ってくれる。そういった物づくりの素晴らしさもまた、ペンタックスを選ぶ理由、ペンタックスのレンズを選ぶ理由であります。その辺のレンズそのものの質感とかを言い出すとマニュアルフォーカス時代のオールドレンズの方がずっと良いのではありますけどね。



 これまで書いてきたように、自分がペンタックスを使い続けている理由には、こういった『画質の良さ』と『レンズの良さ』という面があります。


 もちろんペンタックスに不満がない訳ではありません。オートフォーカスとかオートフォーカスとかオートフォーカスとかオートフォーカスとか。レスポンスとかレスポンスとかレスポンスとかレスポンスとか。


 もっともっとリズム良くハイテンポにじゃんじゃか写真を撮りたいという気持ちはとてもあります。物凄くあります。そういう意見もおそらく沢山アンケートで来ているはずなのですが……、でもこの10年、ペンタックスの一眼レフは全く変わらなかったので……今後も変わらないのだろうなと思います。K-3 MarkⅢが一つの回答だったのでしょうけれど、そこまでK-3 MarkⅢがオートフォーカスやレスポンスに優れたカメラかと言われると……うん。あれがペンタックスの『限界』なんだろうなと(深い深い溜息


 ……最近もペンタックス次期K-1のアンケートとかが来てましたけれど、まだコンセプトすら決まってないような雰囲気でしたし。仮にユーザーの意見がきちんと取り入れられる新型機が出たとして、それって4年後か5年後の話なのだろうなと。そしてそこでオートフォーカスが他社に追いつくか?と言われると、まあ無理なんじゃないですか。


 オートフォーカスの面において、今やミラーレス勢の方が多くのメリットを享受できる時代になりつつありますし、じゃあペンタックスがニコンキヤノンが出す(出した)(出すことになるかもしれない)であろう最後の一眼レフ(D850とか5D MarkⅣとか、D500とか7D MarkⅡとか、D6とか1Dx MarkⅢとか)に並び立つオートフォーカスの性能を手に入れる日が来るかと言われると……永遠に来ない気がします。なので、そういった面においてペンタックスに期待するのは正直自分はもう諦めてしまっています。


 それでも自分はペンタックスが今の画づくりを続けてくれる限りは(おそらく)ペンタックスのカメラをメインの機材として使い続けるとは思いますし、それこそが、それだけがペンタックスを使う理由であり、選ぶ理由であり、他社に対するアドバンテージだと考えています。


一眼レフであることのメリットはあるか

 一方でペンタックスはと言うと、自社が生き残ってゆく為に『一眼レフであること』を最前面に押し出しているような雰囲気があります。厳密に言えば『ミラーレスに掛けるだけの開発リソースがないので一眼レフのままで行くしかない』ということでもあるのでしょうけれど。


 最近もリコーイメージングは『一眼レフミーティング2022』なるものを開き、ペンタックスのみならず他社一眼レフユーザーをも巻き込んで一眼レフ界隈を盛り上げてゆこう、一眼レフユーザーを取り込んでゆこう、一眼レフを存続していこうといった様子でした。


 なので最後に一眼レフであることのメリットというのを考えてみたいなと思います。



 最初に申し上げてしまいますと、正直に言えば自分は、現代において一眼レフで撮影することのメリットはほとんどないと思っています。少なくとも画質の面でメリットはありません。ミラーレス機の方がフォーカスの精度や人物や瞳の認識、測光の精度、色づくり、画づくりの面でメリットは多大にあると思います。


 ただ……明るい単焦点レンズを装着してファインダーを覗いた時に味わえるあの感動、『ああ、世界はこんなにも美しかったのか』と思える瞬間。あれだけは間違いなく一眼レフだけの特権だと考えています。


 自分もFA31リミテッドを購入してファインダーを覗いた時、その中に写る光景の美しさには息を飲みました。あればかりはレンジファインダーやミラーレスには真似できないことだと思います。


 ……とは言えそれらは画質の面では特に何らかのアドバンテージが得られる事柄ではありません。先日、行われた一眼レフについてのアンケートを見ていても、精神論的禅問答に終始していた……というのが率直な感想であり、一眼レフにおける合理的なメリットが何ひとつ残っていない……というのが素直な印象でもありました。明確なメリットがあるとすれば、いい所『EVFだとチカチカして目が痛くなる』的なものぐらいではないでしょうか。なお、自分はそういう禅問答は大好物です(笑)


 結局の所、一眼レフがミラーレスに対して勝負を掛けるなら『一眼レフならではのフィーリングの良さ』を押し出してゆくしかないのかなと思います。


 その為に必要なのは『光学ファインダー』と『シャッターフィール』の素晴らしさでしょう。


 光学ファインダーの素晴らしさについて。例えるならソニーα900という超名作一眼レフがありまして。自分も以前、京都のカメラ屋さんでそれを覗いた時にはその明るさ、美しさには驚愕しました。便利ズームを装着しただけなのに、こんなにもクリアな視界が得られる光学ファインダーがあったのか……と。余談ですが『α900、触らせてください!』と申し出た時、コニカミノルタ好きだという店員さんのあの嬉しそうな顔は忘れられません(笑)


 光学ファインダーと言えばK-3 MarkⅢが大変な売り所としてアピールしていますが……。確かに明るくクリアなファインダーだと感じましたけれど、K-1を普段から使っていると、そこまで違いは感じなかった、というのが正直な所でもあります。やはり光学ファインダーはAPS-Cではなく、35mm判フルサイズ機以上でこそ真価を発揮するんじゃないかなと思ったりもしましたね……。もちろん逆に言えば、K-3 MarkⅢはAPS-Cでありながらフルサイズに対して全く遜色のない光学ファインダーを実現している、という意味でもあります。


 また、一眼レフにおいては『光学ファインダーとレンズ』とは密接な関係にあると思います。光学ファインダーを考える上で、レンズの存在を忘れることはできません。


 例えばキヤノンにF1.2という単焦点レンズが幾つかありまして。これもまたα900を触らせて貰った時と同じ時、5D MarkⅡに50mm F1.2を装着してファインダーを覗いた時の視界の明るさにはびっくりでした。(ただ、あれはあれでピントが超シビアな為か、最新フラッグシップの1Dx MarkⅢに装着してもオートフォーカスはめちゃ遅かったです)


 レンズの持つ光学性能を、自らの肉眼でも体感することができる。これこそは一眼レフのメリットであり、一眼レフの真髄かなと思います。例えばライカにノクティルックスというF0.95の驚くべきスペックのレンズがありますが……そのレンズを通して見える光景はファインダーでは見えないわけですから……


 これからペンタックスが一眼レフの光学ファインダーを売りにして生き残ってゆくなら……。ファインダーの素晴らしさも当然必要ですが、明るいレンズも必要なんじゃないかと思ったりもします。


 マウントアダプターを介して他社のミラーレスで使うこともできるけれど……光学ファインダーを通してそのレンズの真価を肉眼で味わおうとするならペンタックスの一眼レフが必要不可欠になるような……他社ユーザーですらも思わず『使ってみたい』と思ってしまうような、そんな魅力と個性に溢れるレンズがこの先出るのかどうか。いつまでもFAリミテッド頼みというのもちょっと苦しい。そういった意味でDFA21リミテッドが出てくれたのは嬉しくもありますが、F2.4ですからね……


 ……ちなみにあくまでも個人的な見解としてですが。ニコ……某社とか使ってると痛感するのですが、AF-Sニッコ……某レンズみたいに『明るいのは明るいのだけれど設計に無理があって描写がイマイチ』みたいなレンズもこの世には少なからず存在するので……。あくまでも個人的な見解として、自分自身は『多少暗くても軽量小型できっちり写ってくれるズームレンズ』の方が嬉しかったりします。もちろんこれはペンタックスユーザーの中でも極めて少数派の意見だと自覚はしています。京都って人が多すぎ&街が狭すぎて、自分の足で前後して画角を取るみたいなことが不可能なんですヨ。


 そして個人的に一眼レフに求めているのはシャッターフィールでしょうか。シャッターフィールもまた画質においてはほとんど無関係な要素ではあるのですが、例えばニコンD6やD850、キヤノン1Dx MarkⅢと言った、メカとして完成された一眼レフは本当に素晴らしいシャッターフィールを有しています。


 これらはクイックリターンミラーが作動することによるフィーリングであり、少しでも微妙微細なブレを押えようとするならば、むしろ余計な要素なのだとは思います。……ですがD6や1DxⅢのシャッターを切った時のあのシャッター音、シャッターフィール。撮影中の高揚感を抑えきれないのです。もっともっと、このカメラで写真を撮ってみたいと、心掻き立てられて止まないのです。


 一眼レフのシャッターフィールもまた、レンジファインダーやミラーレスには決して真似できない要素だと思っています。実はこの記事を書くにあたりヨドバシに行ってZ9やらR5やらOM-1やらを触って来たのですが……その連写力は圧倒的であれど、シャッターフィールのショボさにはもう泣けてくるぐらいでした……。電子音が虚しく小さく連続するばかりであり、心に全く響かない、感じない、届かない!


 カメラという道具は、こんなにも無味乾燥で味気ない存在だったっけか……?と。もちろん現代のミラーレスのシャッターフィールの方が実用面では断然メリットがあることは十二分に承知しています。ブライダルやコンサートの現場などでは静粛性だって大切でしょう。


 ペンタックスの一眼レフミーティングにおいて『シャッター音選手権』なんて企画がありました。そこで圧倒的な勝利を収めたのはニコンD700でした。ニコンD700は2008年に発売された一眼レフで、当時のニコンのフラッグシップであったD3の弟分的な存在のカメラでした。あのシャッター音は本当に素晴らしく、自分もあのシャッター音に魅せられて(ペンタックスフルサイズの発売が待ちきれなくて)、D700を買ってしまった思い出があります。


 ……やはり一眼レフにおいて、少しばかり派手で大味なシャッターフィールというのは大切だと思います。先日のシャッター音選手権の結果はそれを如実に表しているのではないでしょうか。


 そこの所、ペンタックスはどうなのか。ペンタックスのシャッター音は……正直どれもおとなし過ぎると思います。K-1にせよK-3にせよ、良く言えば上品だし、シャッターショックを上手く抑えてあるとは思うのです。でもバケペンみたいなカメラが今も人気を博しているのはどういうことなのかと言われると……つまりそういうことだと思います。


 シャッターフィールの素晴らしいカメラの拡充。これもまたペンタックスが一眼レフで生き残ってゆく為には必要不可欠な要素だと思います。思います……が、ニコンキヤノンのフラッグシップに匹敵するような素晴らしいフィーリングのシャッターフィールをペンタックスがこの先、作ることができるのか。作ろうとしてくれるのか……とても難しい気がしないでもないですね……うん。


 でも、他社の一眼レフユーザーを取り込もうとするなら、こういう所もとても大切だと思います。ニコンもキヤノンも、あれだけ完成された一眼レフのシャッターフィールをわざわざ自ら投げ捨てようとしてますし、近い内に唯一の一眼レフメーカーとなるであろうペンタックスが食い込んでゆくチャンスはある……ハズです。



 『光学ファインダー』『明るいレンズ』『シャッターフィール』この三つは一眼レフにおける、いや一眼レフが一眼レフであり続ける為に必要なものであり、一眼レフを使い続けるメリットとして必要不可欠な存在であると思っています。


 ……が、果たして今のペンタックスにそれだけの余力があるのかどうか。そもそもペンタックスがそういう方向に舵を切ろうとしてくれるのか。そもそも自分の考えが合っているのか間違っているのか……。その辺りは難しい所ではあります。正解は誰にも分からないでしょう……


 ペンタックスには色々とお願いしたいことはそれこそ山のようにありますが、とにかく存続してくれないことにはどうしようもないので、ただただ『生き残ってくれ』と願い続けるばかりです。

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