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【新・京都風土記】京都一周トレイル 東山コース山行録

更新日:2020年12月5日

 京都一周トレイルを歩こう。突然ですが、そう思い立ったのです。


 トレイルとは、主に未舗装の登山道や自然歩道を指す言葉です。山間部や山岳部に多いそれらトレイルを一つのまとまったコースとして整理、集約した「トレイルコース」、あるいは「トレッキングコース」と呼ばれるものは日本国内はもちろん、世界中に数多く存在しています。


 日本で有名なものと言えば北アルプスの上高地(岐阜・長野)や、熊野古道(奈良・和歌山)、六甲山縦走(兵庫)。世界ではネパールのグレート・ヒマラヤ・トレイルや、フランスとスイスにまたがるツール・ド・モンブランなど。その距離も数km程度の短いものから、数千kmにも及ぶ長大ものまで多種多様です。


 そして周囲を山々で囲まれている京都においても数多くのトレイルコース、トレッキングルートが存在しています。その中でも、京都の山々をぐるりと一周する形で1993年から段階的に整備されたものが京都一周トレイルなのです。
































(※京都一周トレイルのコース概略図。上記の他、独立した41.6kmの京北コースと呼ばれるルートもある。)


 京都盆地を囲む東山、北山、西山の3つの山々を走る京都一周トレイル。総延長は2020年現在で約84.3km。コースタイムは36時間15分程度とされています。


 いくつもの山々と峰々を登っては下り、また登っては下る……を繰り返す京都一周トレイル。24時間以内にその全てを駆け抜けた、化け物めいた鉄人もいらっしゃるそうですが、もちろん普通は何日か、何回かに分けて歩く形となります。それも全行程ではなく、あちこちに建つ京都の名所旧跡や寺社仏閣などへ寄り道しつつ、コースの一部の一部、おいしい所だけを切り取る形で……です。






















(※京都一周トレイルのコースマップ。北山・東山東部・東山西部・西山・京北・ダイジェスト版の全6種。)


 京都一周トレイルの山行記としては、登山SNSの「ヤマレコ」に旧コース75kmを休憩込み21時間で走破した記録が掲載されている他、色々なブログやSNSなどで数多くの方がテント泊であったり、宿に泊まったりしながらの記録をアップロードされています。


 書籍では、シェルパ斉藤さんの「ニッポン10大トレイル」(エイ出版社)という本に3泊4日(これぐらいが普通のコースタイムと思われる)で京都一周トレイルを歩いた時のエピソードがまとめられています。























(※東山コース外略図。京都一周トレイルの中でも最もメジャーなルートのひとつ)


 今回、慧が歩こうと思ったのは東山コースです。現在の東山コースには2014年に伏見・深草ルート(約9.5km)が追加されていますが、今回はそちらは除いた約24.6kmを歩きます。


 コースとしては京阪電車・伏見稲荷駅(標高26m)をスタートして稲荷山の中腹の四ツ辻(標高165m)まで登った後、東福寺方面へ下山。泉涌寺近辺(標高76m)から今熊野の住宅街(標高56m)を抜けて鳥辺野の丘陵地帯を歩き、国道一号線を渡り、清水山(標高241m)へ。そのまま東山を縦走して将軍塚展望台(標高220m)。将軍塚から粟田口方面(標高50m)へ下山して、蹴上から日向大神宮を経て大文字山へ入り、大文字山四つ辻(標高455m)。大文字山を鹿ケ谷方面へ下山して哲学の道を歩き、今出川白川の交差点(標高76m)から比叡山方面へ登山を開始。瓜生山(標高301m)を登った後、沢を渡り、比叡山中腹のケーブルカー駅(標高690m)……となります。


 全体的に登り傾向となるコースで、登りは標高1400m分、下りは標高700m分ほど。コースタイムは10時間45分とされています。


 どうしてまたそんなことをやろうかと思ったのかと言うと、最近、慧は登山を始めたいと思っておりまして。本当は北アルプスに登りたいと思っていたのですが、今年はコロナ禍の影響でそれも叶わず。トレーニングも兼ねて、山登りがわりに山歩きをしてみようと思いついたのです。それと自分がどれぐらいの時間、どれぐらいの距離を一度に歩けるか……というのを試してみるという意味も大きかったです。写真撮影の時なんかは1日に13kmぐらいは平気で歩くのですが、さてはて。























 2020年10月28日、午前4時30分。京阪の伏見稲荷駅をスタートです。この日の京都は一日中、晴れの予報でして、早朝もそこまで寒くなく、とても良い天候に恵まれました。絶好のトレイル日和だったと思います。


 ザックを背負い、ヘッドランプを装着。トレッキングポールを両手に握って、いざクライム・オン! 長い長い一日の始まりです。


 なお、日の出前の早朝に出発したのは、比叡山のケーブルカーが18時15分で終電となってしまう為、それに乗り遅れないように余裕をもってのことでした。もし乗り遅れたら? 寒くて暗い山の中で凍えながら一晩過ごすか、真っ暗闇の山道を歩いて降りるか……でしょうね……(無理






































 伏見稲荷の駅前にて。これが京都一周トレイルのコース道標です。伏見~深草・東山・北山・西山と、どのコースにもこういった道案内の道標があります。これをたどれば迷わずにトレイルを楽しめるともっぱらの噂ですが、実際の所はどうなのか。


 東山コースの道標は74番まで。途中、二股に分かれているルートがある他、細かく道標が区切ってあるエリアもあり、道標の総数は97程になったかと思います。





















 伏見稲荷の千本鳥居。夜明け前の早朝、もちろん人っ子ひとりいない……ということはなく、こんな時間帯でも何人かの方とすれ違いました。かつて「昼でも女性一人で山に入るな」などと伏見稲荷が言われていたのは今は昔です。24時間、人のまったくいない時間帯などないのではないでしょうか。


 そしてこの千本鳥居を抜けた奥社という所に道標2-1があります





















 さらに奥社からほんのちょっと歩いた所、「根上りの松」と呼ばれる分岐ポイントには道標2-2があります。この東山2-2は伏見・深草F-35も兼ねた道標となっており、伏見・深草ルートのゴールでもあります。


 ちなみに伏見・深草ルート方面へ向かうと、稲荷山へ別ルートから登頂することができます。そちらのルートは鳥居がまったくと言って良いほど建ってはいないのですが、一般的に登られるルートよりも体力的には楽に稲荷山山頂や一之峰を目指せる印象です。





















 午前4時59分。稲荷山の中腹、四ツ辻へ到着です。スタートからの距離は1.7km、標高差139mとなります。コースタイムは40分とされているので、およそ10分ほど早く四ツ辻の到達した形となります。


 四ツ辻まではずらりと鳥居が立ち並び、LED照明も整備されているので、やや足元は悪いとは言え、そこまで苦労することはありませんでした。何度も何度も歩いていますしね……。ただ、問題はこれからなのです。






































 四ツ辻の道標3-1。普通の稲荷登拝は、ここからさらに山の上へと登っていきます。ですが京都一周トレイルにおいては、ここで別方向へ下山。東福寺方面にある稲荷山の北登山口と呼ばれている(らしい)方向へと下っていくことになります。


 ただ、そちらのルートは歩いてもほとんど何も無く(いくつかの社はありますが)、向かう先も住宅街になってしまうので、そのルートを使う人は本当に限られており、歩く人もほとんどおりません。
























 つまり、こういうことなのです。照明なんて気の利いたものは一切なく、真っ暗闇です。ヘッドランプがなければ歩けません。絶対に(※昼間は快適ですよ!)


 ですが道そのものは綺麗です。こちらは稲荷山中腹にある社や店舗への、自動車による搬入路として使われるルートでもあるので、ちゃんと道が舗装されているのです(※機械式ゲートがあるので一般車は入れません)


 何にしても、こういった人気のない真っ暗な道を、ライトだけを頼りに歩くというのは決して気持ちの良いものではありませんね。稲荷山は野生のイノシシも出没するので、もし出くわしたらと思うと恐ろしいのなんのです。
























 午前5時15分。稲荷山を無事に下山しました。コース道標4になります。右側が下ってきた道、左側がこれから進む道です。


 左側の道もまた稲荷山山頂へと向かうことのできる道でして、四ツ辻から少し奥に入った所にある御膳谷奉拝所に繋がっています。よく稲荷山で「道に迷って住宅街に出てしまった! 狐に化かされた!」などと言い始める人がいらっしゃるのですが、標識を見逃してそっちのルートから下りちゃっただけですはい。ええ、初めて稲荷山に登った時の自分の話ですね、本当にありが(ry


 道標4の次の5は目の前です。トレイルコースはすぐに狭い住宅街に入ります。道もややこしく、地図があってもあまり役に立ちません。よーくよーく見ると「京都一周トレイル、こっち」みたなちっちゃい看板が出てたりするので、それを頼りに進みます。朝、新聞を取りに外に出てきたご近所の奥さんにビックリ&心配されたりもして。


 住宅街を抜けて道標6、7のエリア。泉涌寺の周辺も真っ暗闇です。天皇陵がいくつかあって、けっこう広い広場に出たりするのですが、暗くて何が何だかよく分かりません。ヘッドライトで辺りを照らしてみたり、あっちにいったりこっちにきたりで道標とルートを探す始末。


 「これはその内、迷うな……」なんて思い始めたら、見事に予感は当たりました。





































 7の道標。ここから無事に迷いました(白目。7のすぐ近くにある8の道標が見当たらない……と思ったら、分岐で全く違う方向に言ってましたとさ。やはりナイトハイクはよろしくないですね……。すぐ引き返して5~10分ほどのロスで済んだのが不幸中の幸いでした。






















 午前5時40分頃。ようやく暗闇の山中を抜けて、再び住宅街です。今熊野の剣神社のあたりですね。この辺はなかなかお洒落な住宅が立ち並んでいて、歩いてるだけで面白いです。


 東の空も少しずつ白じんできて、辺りの様子も段々とよく見えるようになって来ました。朝の散歩に出てきておられたおじいちゃんに「トレイルか? この辺は一番ややこしいで!」と声を掛けられて道を教えて頂いたり……。確かにこのエリア、住宅街も住宅街すぎて、逆に道が分かりにくいんですよね


 で、見事にまた迷いました。






















 コース道標9-2から10へ向かう道です。手前の比較的綺麗な道をそのまま進むのではなく、狭いコンクリートの階段を登らなければならないのに、見事に通り過ぎましたとさ。「鋭角に曲がる」というおじいちゃんのアドバイスを思い出して、何とかちゃんと気づいて戻って来れましたが……


 一応、石の壁に看板は出てますね……暗くてそこまで分からない……。なお、この階段を上がったら、またすぐ鋭角に曲がります。地図で見てもほんとよく分かんないです。






































 午前5時56分、道標10。住宅街を離れ、ここから再び山の中に入ります。東山三十六峰のひとつ、阿弥陀ヶ峰になるかと思います。そしてここは葬送の地として有名な鳥辺野のあたりになりますね。


 ここからのルートをコースマップで見ると、いくつものヘアピンカーブが続く形となっていて、やたら険しい道があるかのように思えますが、そんなことは全くありません。傾斜はとても緩やかで、むしろびっくりするぐらい快適なハイクになりました。トレッキングポールも相まって、まさに「飛ぶように」歩けました。小走りできるぐらいですね。

























 ただ、このように倒木も出現するようになりました。おそらくですが2018年9月4日に襲来した台風21号の影響だと思います。


 あの時の台風は通過速度は非常に速く、あっという間に京都盆地も過ぎ去って行きました。ですが短時間の間に残した爪痕は非常に深く、あちこちの山で倒木が発生。街路樹はどれも傾いておりました。伏見稲荷も一時は登拝ができなくなりましたし、下鴨神社の糺の森も倒木で明るい森になってしまったり、京都市営地下鉄以外の近鉄・京阪・阪急・JRが全て止まってしまったり……。近鉄なんて、阪神大震災の日もちゃんと動いてたんですけどね。


 この日の京都一周トレイル。どこへ行ってもとにかく倒木が多く、通行止め規制なども各所で見受けられました。あの台風から2年経ってもまだまだ元通りにはなっていないのには驚きでした。






















 午前6時13分。道標14。鳥辺野を抜けると、突然アスファルトの道路に放り出されます。ここは滑石街道であったかと思います。そしてそのまま進むと国道1号線(五条通)に合流します。


 ここから国道1号線を京都市内へと降りてゆき、途中で1号線を渡る形となります。





















 午前6時18分。道標15-1から15-2を経て、16へ。これが国道1号線を渡る地下道になります。国道1号線は何度も何度も自動車で走ったことがあったのですが、こんな地下道があったなんて知りませんでした。


 この地下道を抜けると、ちょうど東山ドライブウェイへの入り口に出ることになります。






































 国道1号線を渡って道標16-1。写真の奥に見える急な階段を登っていくことになります。ここからまた山登りに入る形ですね。ここからは有名な清水寺もある清水山(音羽山)へと登り、山々を縦走していきます。


 この辺まで来るとさすがに周りもかなり明るくなってきたので、ヘッドライトをバックパックにしまいます。いやいや、本当に役に立ちました。mont-bellのEXパワーヘッドランプ、奮発して買っておいて良かったです。






















 午前6時28分。道標17。道の右手に現れた、いかにもな山道を登ってゆきます。ちなみに右手に折れず、そのまままっすぐ行くと清水寺。子安塔の方に出るらしいです。


 ここらは本格的な登りのはじまりです。伏見稲荷以来の勾配になって参ります。とは言え、まだまだ歩き始めて2時間程度でして、まったく疲れもなく元気も元気です。快速快調、ガンガンいきましょう。


 道標17からの区間は、やはり台風の爪痕が色濃く残っており、道が荒れています。一部には通行止めになっている場所も……ですが歩く分には全く問題ありません。


 あっと言う間に道標18-1、清水山の山頂(242.3m)。スムーズに行き過ぎて山頂だと気がつかない程でした。そこからはひたすらほぼ平坦な縦走路。粟田山(たぶん)の東山将軍塚を目指します。






















 道標19のあたり。ちょうど法観寺の八坂の塔の真東にあたるかと思います。山中に謎の庵が建てられています。


 この辺りは、昼間だとそれなりに人も歩いているのかもしれません。道も広くてとても歩きやすいです。途中、犬の散歩をしている方とすれ違いました。このトレイルで、山中で初めて人に出くわしたことになります。そしてこの辺りでは知恩院の方から登ってくる道と合流。ここまで来ると将軍塚は目と鼻の先です。






















 午前7時ちょうど。東山将軍塚展望台に到着です! ここまでの標準コースタイムは3時間05分なので、だいたい30分ほど早く到着しております。道標では21になりますね。早朝の京都市街が一望できてとても気持ちが良いです。この展望台も数え切れないぐらい来ていますが、歩いて来たのは3回目。それも5年ぶりぐらいでしょうか。


 8世紀の終わり頃、桓武天皇はここから見た山背国の愛宕郡と葛野郡(やましろのくに、おたぎぐん、かどのぐん)の光景を見て、この地に都を移すことを決めたと言います。つまりここは京都開闢の地と言えるでしょう。


 将軍塚の名前のいわれとしては、桓武天皇が平安京守護の為に巨大な将軍像(坂上田村麻呂を模したと思われる)を埋めたという逸話がありまして。その将軍塚は今もこの展望台の北側、青龍殿の中に残っています。



































 時間にも余裕があるので、ここで初休憩。東山山頂公園のベンチに座って朝ごはんです。初めて水とカロリーを補給します。ここはトイレも水道もありますよ(綺麗とは言っていない


 今回、背負っているバックパックはmont-bellのチャチャパック45です。映画「岳(ガク)」の冒頭にて、北アルプスの雪渓で滑落してクレバス(原作だとシュルンド)に落ちた青年が背負っていたのと色も容量も全く一緒です(笑)。あるいはドラマ「ゆるキャン」の最終回で、各務原なでしこが購入していたのもチャチャパック(赤の30)ですね。ちなみにチャチャの名称は北方領土の国後島にある爺爺岳(ちゃちゃだけ)に由来します。


 東山トレイルを日帰りするだけなら、こんな大容量のパックは不要だと思います。一応、中身としては、歩きながら水が飲めるmont-bellのトレイルウォーターパックの3リッターモデルや、Amazonで買った緊急用のファーストエイドキット。それとワークマンの防寒着「イージス」の上下(※とても温かいですが、登山向けの防寒着ではありません)などなどが入っています。携行食はカロリーメイト×4箱分。


 45リッターは山小屋1泊2日ぐらいの山行で使うバックパックなので、東山トレイルにはオーバーかなと思います。まあ、小型バックパックを買い直すのも面倒でしたし、何よりもこのバックパックに慣れておきたかったので背負ってきた感じです。トレイルを歩き通す中でバックパックが苦痛だと感じたことは全くありませんでした。






















 さて、腹ごしらえも済ませてトレイル再開です。山頂公園から下山の方向になります。目の前に見えているのが青龍殿。拝観は有料ですが、この中に将軍塚や、展望台の大舞台があったりもします。


 写真をよーく見ると道標23も写っています。青龍殿の左の方から山を下っていきます。元々は別のルートで下る感じだったように記憶していますが、ちょっと道が変わったのかもです
























 このルートは取り立てて道も荒れておらず、綺麗なものです。道標23、24、25と経て26のあたり。下界が見えてきました。


 手前に見える大きな建物は有名なウェスティン都ホテルです。京都の大企業はここで催事を執り行ったりしてますね。あと何年か前にイノシシに突入されたホテルでもあります。この辺はイノシシがよく出るのです。


 そして写真の奥に見えるふたこぶの山が比叡山。あそこがゴールです。まあ言うて、この時点でコースの半分も来ていないのではありますし、ここからが本当にキツイ区間になってゆくのですが。























 午前7時37分。山を降りて来ました。ここからはまたしばらくアスファルトの上を歩きます。よーくよーく見ると道標28が写真に写っています。


 この辺りの地名は粟田口(あわたぐち)。京都の出入り口である京七口のひとつですね。かつての東海道の出入り口といった感じです。そして粟田口と言えば刀鍛冶で有名な地でもありますね。







































 午前7時40分。道標28。粟田神社前です。ここは有名な刀剣が収められているとかなんとかで、刀剣女子の方々が押し寄せて来てるらしいのですが、詳しくは存じ上げませぬ。あ、刀剣乱舞は花丸より活劇の方が好きでした。何でしたっけ、御朱印だか御朱印帳だかもとうらぶ的なデザインなんでしたっけ(よく知らない


 それは置いといて、ここからは三条通を山科方面へ向かって歩きます。






















 三条通、ウェスティン都ホテルの前。トレイルのルートとしては反対側の歩道を進むのが正しいはずです。


 かつてここは路面電車(京阪電車の京津線)が走っておりました。確か1992年まででしたかね。道がやたら広いのは、その名残と言えば名残です。今の京津線は地下鉄東西線と軌道を共用する形で、この地下を走っています。






















 午前7時46分。道標30-1、30-2。蹴上の交差点に到着です。この交差点にはかつて駅(というか停留所)があり、目の前の坂を路面電車が轟音を立てて駆け上がって行っておりました。おぼろげながら記憶に残っています。


 この周辺は琵琶湖疏水に関連する史跡や構造物が数多く残っています。この写真の左手には蹴上の第二期発電所が残っていますし、目の前にあるのは有名な蹴上インクライン。春は一面に桜の花が咲き乱れます。


 ここには京都随一のお嬢様学校であるノートルダム女学院(中学高校が鹿ケ谷にある)の送迎バスのバス停があり、生徒さんが大勢待機しておられます。茶色の制服が印象的ですね。お嬢さんたちの横を失礼して交差点を渡りましょう。






















 道標31。ねじりまんぽ。このレンガづくりのトンネルは強度と耐久性を出す為にレンガをねじるような形で積み上げられています。上部に掲げられているのは「雄観奇想(ゆうかんきそう)」の額。琵琶湖疏水建設時における京都府知事・北垣国道による書です。トンネルの反対側には「陽気発處」の揮毫があったそうですが、今はほとんど風化してしまっています。


 このトンネルを歩く学生さんは、東山中学高等学校(永観堂あたりにある)の生徒さんですね。京都では数少なくなった私立男子校で、甲子園出場経験もある有名な学校です。あの学校もまたイノシシに突入されたことが……


 ちなみにねじりまんぽのすぐ近くにある蹴上駅の階段は、なんと京都駅の大階段より段数が多いです。東山の生徒さんの中にはあの階段をひたすら歩き通している方も少なくありません。






















 午前7時54分。蹴上インクライン。全くと言っていいほど人がいませんが、桜の時期には人という人で溢れ返ります。始発で来てもめちゃめちゃ人がいます。


 慧がインクラインに初めて来たのは小学生の時、琵琶湖疏水についての授業で社会見学に来た時でした。あの時はインクライン、南禅寺水路閣、疎水記念館、京都市動物園あたりを巡った気がします。以来、蹴上は京都で最も好きなスポットです。


 ここは桜の時期は大勢の人で賑わいますが、それ以外の時期は閑散としています。でも完全に葉の落ちた冬や、雑草生い茂る夏も良いものですよ。






















 インクラインを上まで登ると橋のたもとに道標32。インクラインの蹴上船溜まりです。奥に疎水のトンネルがあり、かつてはここを大量の荷物を積んだ船が行き交ったそうです。現在では遊覧船(最近になって復活した)が運行しており、その下船場になるのがこちらです。


 京都一周トレイルはこの蹴上からスタートする人が多いようですね。蹴上から登って、大文字の火床を通り、銀閣へ降りるトレッキングコース。ぶっちゃけそれが無難だと思いますはい。






















 疎水を渡って山中へ赴いていきます。東山三十六峰のひとつ、大日山にあたるのではないでしょうか。


 この辺りの山々は意外と住宅地が多く(廃墟も多いけれど)、ゲストハウスもあるようで、一回の山行で京都一周トレイルを伏見深草スタートでフルコースで歩き通すなら、おそらく蹴上が一日目の宿泊地になると思います。


 そして何故かこの辺り、お隣の九条山などはセレブな方々に人気があって、歌手の坂本龍一さんが土地を買っていたことがあるとかないとか。ついでに言うと、入居に1億円が必要な超高級老人ホームのヒルデモアがあるのもこの辺です。


 それはさておき、東山コースは真ん中を進みます。たぶんどの道を選んでも、どこかしらで合流できるとは思いますけれどね。






















 午前8時04分。道標33-1のあたり。蹴上から山中に入ってすぐ。日向大神宮(ひむかいだいじんぐう)にたどり着きます。ここは公衆トイレもあります。ただし午前9時からしか開いてません。


 ここで東山コースは二つのルートに分かれます。画像の道をまっすぐに行くか、それとも左に折れて階段を上がり、日向大神宮の境内をぐるりと回るか……です。道をまっすぐ進むと道標34、日向大神宮に入ると33-2があります。両方とも道標38の七福思案処(標高185m)という所で合流します。


 確か34方面へ進んだ方がルート的には短いはずなのですが、今回は敢えての33-2周りです。






















 33-2を過ぎて登っていくと、日向大神宮の天の岩戸くぐりがあります。一つの大きな岩をくり貫いて、中を通って行けます。よくこんなの作ったなぁ……と思いますね。ちょっとしたアトラクションです。


 この後の道標33-3の辺りで道が四ツ辻のようになっており、南禅寺方面へ降りることもできるようです。何にしても、道も道標も分かりやすいので、明るい時間なら何も問題はないでしょう。











































 道標33-3から38へと向かう道。樹木の根が完全に露出している木の根道になっています。木の根道と言えば、鞍馬のそれが有名ですが、たぶんこっちの方が凄いです。


 木の根を踏まないようにしようとしても、足の踏み場がないぐらいの木の根っぷりです。





















 この辺りは傾斜はさほどでもないのですが、やはり倒木が多く、大木をまたいで通らないとダメなような箇所も多いです。さらに道標38や道標39は四ツ辻どころか五ツ辻になっており、分岐もややこしいです。とりあえず向かう先は大文字山なので、大文字と書かれている方角へ向かって歩きます。道を間違えると日向大神宮に戻ってしまったり、山科方面へ下りてしまったりします。


 道標39を越えると、勾配は一気にきつくなります。ごつごつとした岩が露出しており、デコボコ道の登り坂が続いていきます。体力に自信がない人はここいらでちょっとつらくなってくるかもですが、それでも大文字山へ登るルートの中では、これが最も勾配の緩いルートだと思います。


 この辺りで、トレイルを歩く方に二人ほどお会いしました。一人は台湾出身で京都に長いこと住んでおられる方、もう一人は四国でお遍路やったりシーカヤックの経験もあるという方でしたね。お二人とも60は過ぎている感じでした。





















 午前9時07分、道標44-2。道標39からは3kmほど進んだ辺りです。今回、最大の道迷いポイントでした。この場所には車も通れる大きな産業道路(林道)があるのですが、そちらへ行ってしまいました。結果、1時間ほど大文字山の山中を彷徨ってしまいました。


 どれだけ歩いても、すぐ目の前にあるはずの道標45へ辿り着かない……。地図で見る限りでは別ルートから何とでもなる感じだったのですが、最終的には人のほとんど通った形跡のない山道を通って産業道路に戻り、44-2まで引き返す形となりました。


 この途中、初めて自分で疲労を自覚。バテの兆候が出て参りました。ここのロスはあまりに痛かったです。





















 戻ってきました44-2。時すでに午前10時近く。トレイル道標よりも、こっちを見るべきだった……。産業道路を横断する形で、細い山道へ入っていくのが大正解のようで。道標44-2の表示が分かりにくかったです。


 ここで追い抜いたはずの台湾の方と再びお会いして、休憩がてらに色々とお話ししていました。頂いた蜜柑がとても美味しかったです。一口で全て食べてしまいました。ここから火床まで、台湾の方と一緒に行くことに。





















 午前10時02分。道標45、大文字山四ツ辻へ到着。道を間違えて入り込んだ産業道路からは、如意ヶ嶽方面と書かれている側からココへやって来れるはず(確信なし


 四ツ辻を北へ向かうと大文字山三角点(山頂)を経て、大文字の火床へと到りますが、京都一周トレイルのルートとしては、ここで西に山を下り、鹿ケ谷方面へと下山することになります。山頂へはすぐなのですが、火床へは山道を片道1kmぐらいですね。でもせっかくなので寄り道することに致しましょう。


 午前10時05分。標高465m。大文字山の三角点、頂上へ到着です。左手前に見えるのが、将軍塚展望台です。ウェスティン都ホテルも見えています。標高が全然違いますね。ここからの景色は本当に素晴らしいです。写真には写っていませんが、山科の方まで見えています。


 大文字山の山頂まで来ると、トレッキングしている人たちの数も一気に増えてきます。9割9分、軽装の人ばかりですが、大文字山はかなり傾斜が急で道も険しい為、けっこう危ない道ばかりです。この日の2週間ぐらい前には遭難した人がいてヘリコプターが来ていたようですが、それも理解できます。ちなみに台湾の方は「台湾は山ばかりでね、小さい頃はそこで遊んでたんだよ」とのことで、急な勾配を杖もなしに歩いておられました。


 なお、大文字山登山については「大文字山トレッキング手帖」という本がナカニシヤ出版から発売されているので、おススメです。


 午前10時20分。大文字山の火床に到着です。写真では分かりにくいですが勾配がもの凄くて、目の前の先まで市街地が押し迫っており、大迫力です。LEDを持ってこなかった痛恨のミス()


 吉田山や真如堂、京都御所、糺の森などが見えていますね。そしてここを下っていくと銀閣寺の裏手に下りる形になります。銀閣から登るのが大文字山へ登る一般的なルートになるかと思います。


 台湾の方は、今まさに眼下に見えている浄土寺のあたりに住んでおられるようでして、ここからそのまま下って帰られて行きました。お疲れ様でした。


 自分はここからもう一度、大文字山に登り返して四ツ辻まで戻り、鹿ケ谷方面へと向かいます。なお、火床には同人関係でお世話になっているそひかさんがいらっしゃったそうなのですが、登り返した為、ここでは遭遇せずでした。代わりに山頂付近で野生の鹿と遭遇しましたとさ。ぴょんと跳ねて登山道を横切っていきました。





















 さて。火床から山頂、四ツ辻を経て、鹿ヶ谷へ降りる道です。ここの荒れっぷりは凄まじいです。倒木と伐採木がこれでもかというぐらいに待ち構えています。


 勾配はもちろん急です。さらに湧き水が登山道に流れ出しており、道はじゅくじゅくにぬかるんでいます。かなり危ないルートです。トレッキングポールなしでは、あまり歩きたくないですね。







































 午前11時17分。道標46、楼門の滝付近。ここの石段なんかは、もはやガケですよガケ。それもそのはず、京都一周トレイルガイドブックを読んでいると、ここは「東山コースで最も険しい区間であり、初心者は銀閣方面から下りることをおすすめする」といった風に書いてありました。


 実際、あれだけ人で賑わっていた大文字山ですが、この鹿ケ谷ルートでは1人としかすれ違いませんでした。女性でしたが、息も絶え絶えでした……






















 午前11時50分。道標50のあたりです。ようやく哲学の道へと出て来ました。ここからは当分、アスファルトの上を歩きます。


 哲学の道も桜の時期は大勢の人で賑わうのですが、それ以外のシーズンは割と閑散としています。まあ、もともと桜並木以外に何かあるという訳でもないですしね。いいところ、紅葉の名所である永観堂禅林寺か、大河ドラマの主役ともなった新島夫妻の墓ぐらいのものでしょう……
























 午前12時。道標51へと到着です。今出川通、銀閣へと入っていく所ですね。ここでそひかさんが待ち構えておられましたとさ。お久しぶりでございました(笑)


 ここまでの標準コースタイム6時間40分ぐらいですが、この時点で7時間30分が経過しています。やはり大文字山で迷った時間が痛かったですね。休憩時間と道迷い、火床への寄り道時間(これも大きい)を差し引けば、5時間40~50分ぐらいなので、歩行ペース的にはまぁまぁではあるっちゃあるのですが。























 午後0時06分。今出川通を西へと進み、今出川白川(浄土寺)の交差点。ここから北白川の住宅街を進んで比叡山の登山口へと向かっていきます。


 そしてまあ、ここからのルートがこれまたややこしいのなんの……。まーたちょっと迷いました。今でもストレートに行ける自信がないです。ただでさえややこしい住宅街の細い道路を、やたら曲りくねった案内図の通りに進んで行くわけでして。
























 北白川の住宅街から、大文字が見えています。先ほど休憩した場所は、大文字の「大」の一番上の所、火床56番になります。ちなみに大文字の一角目は80mあります。


 今夏はコロナウィルスの影響によって五山送り火は縮小して行われることになったのですが、それに先立つ2020年8月5日、何者かがLED(たぶん)によって勝手に大文字を点灯、ちょっとした騒ぎになりました(笑)


 もっとも、こういうイタズラによる勝手大文字は20~30年に1度ぐらいは起きている風物詩みたいなものでもあります。勝手に「大」を懐中電灯で点灯した人たちもいれば、「Z」「HT」、はたまた「犬」が出現したこともあります。もちろん大文字保存会の人たちは激おこです。
























 北白川を進んで、山中越えのあたり。「熊出没注意」の看板があります。この辺りは割とよくイノシシや鹿が出現するのですが、熊は聞いたことがありません。ただ、鞍馬方面あたりにはツキノワグマが生息している……という話は聞いたことがあります。


 実際の所はよく分かりませんが、京都はああ見えて野生動物も多いので、京都一周トレイルをテント泊で山行するのはちょっと怖いですね。いずれは挑戦してみたくはありますが。
























 午後0時25分頃。道標55を越えたあたり。道標の指示通りに進むと、なぜかどう見ても私有地の中、もうちょっと具合的に言えば北白川のバプテスト病院の駐車場の中に入っていきます。


 「本当に合ってるのか?」と思いながら進むと、駐車場の隅っこ、壁際に沿ってトレイルコースが続いてきます。ウソのようですが、ここが瓜生山、比叡山への登山口のひとつのようです。ここから再び山登りになっていきます。
























 午後0時26分。バプテストの駐車場から山中へ入ると、すぐに道標56-1。分かれ道となりますが、どちらへ行っても大丈夫。ただ、まっすぐ行った方がどう見ても早いです。


 京都一周トレイル東山コースにおける四つの分かれ道の二つ目ですね。せっかくなので大山祇神社の方から周って参ります。ちなみにこの次の56-2でも分かれ道があり、そちらは旧の東山トレイルルートと現在のルートの分かれ道になります。「57→58→59→60」のルートと「57-1→58-1→58-2→59-1→59-2→59-3→59-4→59-5→60」のルートです。距離的にはどちらも変わらなさげですが、前者だと瓜生山の山頂は経由しないです。せっかくなので後者のルートを選択しました。


 伏見稲荷駅を出発して8時間、18km。この頃になって来ると、遂に身体に異常が出てきました。右膝の外側部が痛むようになってきたのです。おかげでペースはこれまでに比べると格段に落ちてしまいました。完全なノロノロ歩き。とは言え、本来の山登りのペースとしては、これぐらいがいいのかもですが。
























 午後0時45分頃。道標58-2を越えた所です。山の中に入ってからというもの、段々と道が荒れてきました。傾斜も急で、これまでとは異なる地質で岩肌も多く、とても歩きにくいです。


 また、分かれ道が非常に多く、きちんと道標を確認して進まないと本当に迷ってしまいます。ですが、瓜生山方面へはいくつかルートもあるようで、うまく道を選択できるなら、トレイルコースを歩くよりも早く比叡山に到着できそうな雰囲気もあります。


 登山客は他に5人ぐらいお見かけしましたが、決して多いとは言えません。瓜生山へ登る人はあまり多くはないようです。











































 そしてこの頃になると、本格的に膝の痛みとバテの症状が酷くなって来ました。途中で追い抜いた女性3人パーティに追い回される始末……


 何度も何度も小休止を重ねました。鼓動は速く、呼吸も息切れが止まりません。ですが、どちらかと言えば膝の痛みこそが深刻でした。トレッキングポールだけが頼りです。登りよりも下りの方がつらいですね。アップダウンも非常に多くてキツかったです。


 mont-bellのトレッキングタイツを履いていたから何とか歩けたのか、それとも締め付け過ぎて痛みが発生したのかは分かりません。何にしても現代人、8時間も9時間も山道を歩くようにはできてないですね……。それなりにトレーニングを重ねないと。


 午後0時58分。道標59-3、瓜生山の山頂に到着です。標高301m。浄土寺の交差点は標高76mでした。ゴールの叡山ケーブルカーの駅は標高690mなので、ここからもまだまだ登りにになります。


 ……とは言え、ここからはしばらく平坦な道が多かったように思います。瓜生山の山頂から比叡山の中腹あたりまで、縦走するような形になったようです。膝は楽ですが、細い崖道が長く多くて決して気は抜けません。


 午後1時14分頃。道標62を過ぎた辺りでの景色です。目の前に見えるのは宝ヶ池ですね。五山送り火のひとつ「法」の字が見えています。奥の方に見える煙突は、京都市東北部クリーンセンター。


 この辺は白鳥山と言い、標高およそ330m。北城出丸と言う、北白川城の砦があったそうです。現在は見晴し台となっていますね。


 道標63を越えたあたりで、登山客の方も増えて来ました。宝ヶ池や一乗寺の方からも登山ルートが延びているので、そちらからの人が多いのでしょう。


 道標64では20~30人の団体パーティともすれ違いました。皆、一様にきちんとした装備でトレッキングポールも持っていたので、たぶんですがアウトドアメーカーあたりのトレッキングツアーだったのでしょう。大阪に本社を持つmont-bellが京都一周トレイルのツアーも開催しているので、それかな?とも思います。























 午後1時33分。道標65に到着です。道標62から67のあたりは比較的平坦なのですが、地図上で見ても分かる通り、とにかく距離が長いです。


 歩いても歩いても道標65にたどり着かない上に、一箇所、案内の全くない分岐があったので、地形を観て判断する羽目になりました。それでも迷わなかったので良かった良かった。なんやかやで瓜生山と比叡山では全く迷わなかったです。


 午後1時51分。道標67の石鳥居(419m)に到着です。四つ辻になっており、奥へまっすぐ行くと比叡山ドライブウェイ。石鳥居の右側を後方へ行くと、山中越えの不動温泉へ到るようです(両方ともけっこう遠い)


 林業や治水工事の為のルートとしても使われているようで、この日もこの周辺は大勢の作業者の方がおられました。


 広くて綺麗な道ばかりなので、ここからは楽できるのかと思いきや、京都一周トレイルは左手に折れて崖道を下って行く羽目になります。ここから標高380mの水飲対陣跡まで一気に下って行きます。


 道も悪く、足の踏み場や置き場にも困る急傾斜を、一歩、一歩そろりそろりと下って行きます。足を踏み外したら滑落ですね。トレッキングポールの偉大さを感じたポイントのひとつです。






















 道標67から69に到るまで、沢を2回渡ります。下って沢を渡り、また登って下って沢を渡る感じだったと思います。二つ目の沢のあたりが道標68で、水飲対陣跡です。


 一つ目の沢を渡ったのが午後1時56分、道標68へ到達したのが午後2時7分頃でした。道標69には修学院の方からの登山道があり、その一つが有名な雲母坂(きららざか)です。この辺りのルートはメジャーのようで、登山客の姿も一気に増えました。いよいよ比叡山が近づいてきたといった雰囲気です。


 午後2時10分。道標69を少し過ぎたあたり。眼下に岩倉の街並みが見えています。宝ヶ池の京都国際会館も見えていますね。


 岩倉と言えば雪がよく降るので「陸の孤島」なんて揶揄されたりもするエリアです。かつては田んぼと畑があるばかりでしたが、今ではとても綺麗な住宅街が広がります。


 そして道標69まできたら、道標74のゴールまでもうちょっと……!と思いきや、全然そんなことはありません。なぜなら標高300m分を一気に登らされるからです。急勾配の山道が延々と続きます。まさに最後の難関です。


 この辺では反対方向から山を下って来る人が多かったです。比叡山のトレッキングは雲母坂から登るよりも、ケーブルカーで登ってから下る形で愉しむ人が多いみたいです。まあ、単純に考えてとても合理的ですよね……。すれ違った団体パーティもそういう感じでしたし。



 午後2時26分。道標70に到達です。この場所は見覚えのある方も多いかと思います。ここは京都市営地下鉄の広報キャラクターである「地下鉄に乗るっ」と京都一周トレイルのコラボ「京都一周トレイルを歩くっ」のポスターで使われた場所です。2017年4月頃から市営地下鉄の各所に掲示されていました。紅葉バージョンもありますよ。


 ポスターと実際の景色では道標の場所が大きく異なります。道標は写真の後ろ側ですね。ちなみにこのポスターで太秦萌が持っているのはペンタックスQというカメラです。発売当時、世界最小のレンズ交換式一眼カメラでした。自分も持っていますが、ちっちゃくてかわいいカメラですよ。小型なのでよく売れたそうですが、体格の大きな人の多い海外では微妙だった……と、メーカーの開発のえらい人から教えて貰った事があります。


 道標71~72のあたりでは幼稚園の団体さんと離合。大文字山でも幼稚園の一団がいましたし、京都の幼稚園はなかなかのスパルタ教育を施すようです(笑)


 この辺りは道も細いので、すれ違いはそこそこ気を使いますけどね。






















 午後2時46分。道標73-1に到達です。ここまで来ればあともう少し。ルートはまた分かれ道で、直接ゴールの74へまっすぐ向かうルートと、行者道と呼ばれる迂回ルートをぐるりと歩く(73-1→73-2→73-3→74)ルートに分かれます。


 この辺りまで来ると膝がかなり限界に近かったのですが、せっかくなので行者道を選択。倒木なのか伐採木なのかよく分からない樹木が雪崩を打っている横、崖道を歩いていきます。










































 トレッキングポールに寄りかかるような形でヨロヨロ歩きです。途中でギブアップするにしても、道標65を越えたあたりになると、もはや登っても下っても距離が変わらないし、どちらがエスケープルートと呼べるのかは微妙でしたし。それに下りよりは登りの方が膝がマシなので歩き通しました。


 行者道ではこれまた道を塞ぐ倒木があれこれあったのですが、膝が痛くてそれをくぐるのも一苦労。四つんばいになってなんとか抜けました。……なお、行者道の途中、崖の倒木に女性物の靴が一足、揃えて吊るしてありまして……。自殺者かどうかは分かりませんが、とりあえず京都府警に情報提供はしておきました。


 午後3時06分。ついに道標74に到着です。標高690m。コース全長24.6km(+α)を歩き通しました。タイムとしては10時間30分ぐらい。標準コースタイム10時間45分(※休憩は含まないタイム)と同じぐらいですね。


 いやあ……キツかったです。+αの道迷い&寄り道が特に。ストレートに行けば休憩込みで9時間程度。休憩時間を覗けば8時間ちょっとぐらいでしょう。膝が痛くて痛くてしょうがなかった割には悪くないタイムです。


 ゴールからの景色は……そんなに良くないですね(苦笑) 5年ぶりにここまで来ましたが、相変わらずです。


 道標74。京都一周トレイル東山コースの最終道標です。京都一周トレイルそのものは、ここから北山東部コース、北山西部コース、西山コースと続いていきます。


 比叡山北方へ縦走。北山東部コースの横高山(767m)、水井山(794m)の辺りが極めて急な登りになるようですが、それを過ぎれば基本的には下り勾配になります。


 とは言え、東山コースが最も長くて最もアップダウンが多いので、文字通り山はクリアしたことになるでしょう。ともかく今日はここで撤退です。10月も終わりに近づく候、山の上で立ち止まると身体が一瞬で冷えてしまいます。10時間ぶりに上着を着て、ケーブルカーの駅へ。


 30分に1本のケーブルカーで山を下り、八瀬比叡口駅からは叡山電車に乗っての帰り道。写真の右は、叡山電車に2018年3月から導入された新車両「ひえい」です。初めにイラストで見た時はびっくりしましたが、現物を見ると到って普通な感じでした。


 それにしてもちょっとした階段の下りが本当にキツイです。京都一周トレイルをきちんと歩き通すなら、もっと小分けにして登るか、もっと鍛えないとダメですね。











 どうにかこうにか出町柳まで戻って来ました。ここからは歩いて鴨川を渡って、出町枡形商店街へ。京都アニメーションの「たまこまーけっと」の舞台になった場所ですね。ここの外れに有名な「餃子の王将 出町店」があります。


 出町の王将と言えば、お金のない学生には30分の皿洗いをして貰う代わりにタダで食べさせてあげることで有名でした。ですが店主さんの高齢に伴い、2020年10月30日で閉店することに。今までお疲れ様でした……。冷えた身体にラーメンとチャーハンが染み渡りました。



 こうして終わった京都一周トレイル・東山コースの初挑戦。膝の痛みが酷くて、その後も4~5日ぐらいは階段の昇り降りができなかった事を除けば、まぁまぁな手応えだったと思います。筋肉痛そのものは2日ぐらいで消えましたし。


 10月28日という時期も良かったのか、身体も暑くなりすぎず、冷えすぎず。2000cc持参した水も、結局は500ccしか消費しませんでした。途中購入の分を含めても1000ccでしょう。夏場はキツそうですが。


 おそらくこの日は30kmは歩いたと思います。膝の痛みさえなければ、まだまだ歩けたと思いますが、さすがにこればかりは仕方ありません。それ以外では苦行でもなんでもなく、最初から最後までおもしろおかしい山行でした。


 2020年はもう日が取れないとは思いますが、来春からは北山東部・北山西部・西山・伏見深草も踏破していきたいですね。今からとても楽しみです。



 ……そして翌日、


京都市「では、来週から京都一周トレイルのスタンプラリーを開催する!」

は?「慧さん」


(おしまい)


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~きょうの一冊~


京都一周トレイルについてもっと知りたい方へ、以下の書籍をご紹介しておきます。


■「ニッポン10大トレイル」 / シェルパ斎藤 (エイ出版)

有名な登山家であるシェルパ斉藤さんが実際に京都一周トレイルのフルコースを歩いた時の様子が掲載されています。3泊4日の行程となっており、おそらく最も一般にも参考になると思います。


■「大文字山トレッキング手帖」 / フィールドソサイエティー・法然院森のセンター (ナカニシヤ出版)

京都一周トレイル(東山コース)のクライマックスとも言える大文字山。こちらに焦点を当てた内容で、各種ルートも細かに記載されています。京都一周トレイルは大文字山だけでも十二分に楽しめるので、とてもおススメの本です。


■「京都一周トレイル Kyoto Trail Guidebook」 / 京都トレイルガイド協会 (ナカニシヤ出版)

京都一周トレイルについて、テキストと地図で最も詳細に解説されている本です。全文、英語訳つき。ただ、実際にトレイルに持参するには実用性に欠くかもしれません。



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