※この記事は2017年3月15日に別ブログで公開したものの再掲載となります。
3月も中旬に差し掛かり、京都の街は汗ばむ日も出て来た……と思ったら、また凍えるような寒さが襲い掛かってきたりの日々です。最近だと朝と晩は寒いのに、昼間は暑かったりで。寒暖の差が大きいという、盆地特有の気候に悩んでおります。
2月のCP+から二週間程が経ちましたが、少し時間が取れまして。ようやくペンタックスKPのテストシューティングに伏見稲荷へと行くことができました。
この日は全体的に曇り空でしたが、唐突に太陽の光が差し込んだり。かと思えば、また急に曇り空。しまいにはぽつりぽつりと小雨まで降るという、京都の春によく見られる非常に不安定な天候でした。
なお、今回の写真について。撮影前にカメラ内のカスタムイメージの項目でパラメータをいじったりはしたものの、全てjpeg撮って出しのものです。
先日の横浜・東京での試写の時も感じましたが。KPの画作りはK-1やK-5Ⅱsとはだいぶ変わった印象です。ハイライト側とシャドウ側の処理のバランスが変わっていると申しますか……
露出計を信じて、とりあえずプラスマイナスゼロで露出を合わせてシャッターを切ると、基本的にアンダーな暗い写真になります。もちろんカメラというのは、基本的にどれもそのような傾向があるとは思いますが、KPは特にその傾向が顕著かなと感じます。
一方で。露出計を睨みながら、かなりオーバーの方向へと露出を振っても、なかなか白飛びすることはありません。上の柄杓なんかも、うまい具合に階調が残っているなぁ……と驚いております。CCDに対してCMOSは明るい場面での描写が苦手……と聞いたような記憶もございますし。なかなか、こういう風にぎりぎりの明るさで透明感のある画が出てくる機種というのも珍しいように思います。
ただ、全体的にオーバーな画に振れるか、アンダーな画に振れるかのカメラという感じでして。K-1のように安定感がなく、ややじゃじゃ馬なカメラだと感じました。これは画像処理の問題なのか、イメージセンサーの素性なのか……DxOベンチマークあたりでダイナミックレンジのスコアがどのようになるか、興味津々です。
伏見稲荷、千本鳥居。ここは色々なカメラで幾度となく撮りましたね……。この場面、ホワイトバランスについてはマルチパターンオートに設定しております。
K-5Ⅱsの時は、鳥居のアンバーを補色しようとするあまり。石畳がブルー被りしているような画になりました。その辺り、リコー由来の技術であるマルチパターンAWBを搭載したK-1や、本家リコーのGRは、見事な色を出してくれておりました。
KPについてもごらんの通り。とてもバランス良く色を表現してくれています。ただ、露出のプラスマイナスによる色の抜け具合などは、K-1の方がうまくカバーしている印象です。
伏見稲荷、熊鷹社付近にて。実はこちらの写真ですが、やや絞り込んでみての撮影でして、ISOは3200、シャッタースピードは1/40です。
やや日陰になっている場所なのですが、暗すぎはしないが明るいというわけでもない光環境。とは言え、そんな中でISO3200でこれですので、ISO3200は完全の常用の域であるかと思います。
個人的には手前から一つ目の小鳥居の表面を、もうちょっと暗めに撮りたかったのですが。奥へと続いて行く小鳥居の明るさを考えた時、これぐらいのバランスの露出が限界でした……
D-Range設定のシャドウとハイライトをAutoにしたりOFFにしたりONにしたりで色々と調整してはみたのですが、なかなか「これは!」という設定に行き当たりません。個人的にはD-Rangeはいじらずに、カスタムイメージの詳細設定で、キーをハイの方向に2クリック分ぐらい振ってしまって、それで露出計がプラスマイナスゼロの設定で撮るのがベストかなとも感じます。
写りについては全体的に柔らかい感じ……なのは、おそらくリミテッドレンズ由来のものだろうということで。DA16-85mmあたりを手に入れて来て、きちんと写りの違いを精査してみたいですね。
そして画作りについて、少し思ったのは。ひょっとしたらこれはフィルムライクな写りを目指しているのかな……ということですかね。以前にフジフイルムX-Pro2を伏見稲荷でテストしたことがあるのですが、時折それを想起させる画が出てくると申しますか……
ややフィルム風味なペンタックスの鮮やか。イメージセンサーが本来持つダイナミックレンジを、jpegに書き出す段階で敢えて狭めることによってインパクトのある画に仕上げる感じで。フィルムライクなボディデザインに加えて、ひょっとしたらフィルム的な写りを再現しようとしたのかな……と勘ぐったりもします。いや、さすがにこれは勝手な妄想です……
熊鷹社を越え、三ツ辻へ。そこからさらに稲荷山は、その勾配を増して参ります。この辺りまで来ると、最初に飛ばし過ぎて息切れをしている方をよくお見かけしますね。
稲荷山は一周2時間ぐらいと言われます。どうしても慣れない方はペース配分が分からずに、とにかく登り始めにガンガン飛ばしてしまうのですが。それをやってリタイヤする方も少なくはなく……
自分の場合、稲荷山に登る時は写真を撮りながらということで5時間ほどかける感じです。ゆっくりでいいんです、ゆっくりで……
お昼過ぎ。昼食を食べて一服して……ぐらいの時間帯からゆっくり登り始めると、四ツ辻という場所でちょうど夕陽が見られます。この日の京都の日の入りは18時5分頃でしたが、西の山が高めなので、ここからの見る太陽はもっと早めに沈みました。
レンズはDA20-40mmのリミテッドでして、HDコーティング採用のレンズですが、ゴーストやらフレアが出ていますかね。さすがに逆光については、設計の新しいDFA28-105mmの方が上手な感じでございます。
しかし四ツ辻。見ての通り、風の吹きさらしになる場所なので本当に寒かったです……。よって茶店でおぜんざいを戴いてから再出発。
……そして日が沈めば、ついに伏見稲荷・夜の部でございます。
四ツ辻からは右周りと左周りの二種類の方向で山頂へ向かうことができまして。体力的に楽なのは左周りですが、個人的には右回りが好きなので、右周りで向かうことに致します。
ぬめりとした質感がとっても素敵な、眼力社の逆さ狐さんでございます。大体みなさん、この狐は撮影してゆかれますね。
眼力社のあたりは完全に日の当たらない場所にありまして、日中でも薄暗い場所でございます。ISOは800ですが全く問題ない感じでございます。
……一方でバッテリーの方は色々と危ない感じでございまして。この日、この場所まででjpeg+RAWで150枚ほど撮影したのですが、既にバッテリー表示はイエローです。ライブビューで撮ろうとするとレッド表示。
ここまで撮影についてはライブビューはほぼ使用せず。公称値でバッテリーライフは420枚だそうですが、この日の寒さも相まってか、バッテリーの消耗が早いです。事実、暖かかった東京での撮影の日は割とバッテリーは余裕でしたしね……
暗所オートフォーカスについては……K-5Ⅱsの方が……早かった……ような……気が……うん。
ええとですね……K-1もそうだったのですが。暗所AFはK-5Ⅱsがやたらめったら速くて優秀で、K-3以降は一気に遅くなったような……?です。迷った挙句に合焦を諦めるケースも少なくないです。
ライブビューでコントラストAFを使った方が、暗所AFは確実なイメージです。これは逆にK-5ⅡsだとコントラストAFによる暗所AFはさっぱりでした。
他にもボタンを操作した時の各種レスポンス。例えばオートパワーオフ時からの復帰のタイムラグや、ストロボ使用時のレリーズラグなど。K-5Ⅱsは本当にレスポンスが良かったのに、K-3・K-1・KPは本当にレスポンスが悪くなってしまいました……。これだけは、これだけは本当に改善して欲しいポイントです。
CP+でも開発者の方が「ウチは意見を貰ったら、ちゃんと聞きます!」みたいなことを仰っておられましたし。さりげに前々からレスポンスについては自分も意見を送っているのですが……K-3Ⅲに期待ですかねえ……
伏見稲荷、御剣社。この写真、撮影はISO:12800です。いくら超高感度に強いという評判のKPとは言え、個人的な常用は12800まで……でした。
ちなみにこの場所ですが、以前にK-1のISO:12800で撮影をしたことがありまして。ノイズについてはKPの方が、やや少ない感じです。ただし、解像力についてはK-1の方が上でした。KPに投入されている技術は本当に凄いと思いますが、やはりフルサイズはフルサイズという感想でございます。
それとですが、伏見稲荷。山中の照明が以前は、やや橙色がかった電灯だったのですが。今回登ったら、9割以上がホワイトのLEDになっておりました……。おかげで、とても山中は明るく、足元も見えやすいです。でも、前の方が風情も雰囲気もありましたねえ……
びっくりするほど明るいですね(白目。ちなみにDA20-40リミ、がっつり絞れば綺麗な光芒が出る感じです。それをやるには、さすがにKPでも三脚ないとつらいですけれど。
伏見稲荷は24時間、自由に山の中に入れるのですが。山中はかなり暗く……。階段と鳥居の影が織り成す見事なハーモニーによって、足元が本当に見えづらかったのです。
夜間参拝の方で怪我をされる方が出たりするのを防ぐ為、このように明るくクッキリなLEDを採用するに至ったのではないでしょうか。ご丁寧に燈籠までLEDでした。まぁまぁ安全には代えられないですしね……LEDの方が耐久性も良いですし。
一之峰の護り手。伏見稲荷で個人的に一番カッコいいと思っている狛狐さんです。
ISO:25600。シャッタースピードは1/10。狐さんの背中から煌々とLEDの光が放たれており、狐さんの顔とお腹は見た目的には、ほぼ真っ暗でした。
グイグイISOをあげて、グイグイシャドウを持ち上げます。こうして見るとISO25600も、かなりいけますね。K-1と比べると、K-1はぼろ負けです。ノイズについてはK-1とは12800までは違いが分かり辛いですが、25600からはハッキリと分かる感じです。K-1の25600は、なんだかもう塗り画という感じで、非常に不自然な感じなのですよね……
登り始めて4時間。ようやく山頂、一之峰にたどり着きました。もう真っ暗……もといLEDでめっちゃ明るくはありますが……な時間帯ですが、人はけっこういらっしゃいます。ここ数日の京都は行楽シーズンに突入しつつあるようで着物姿の方を大勢お見かけしますし、時期的に観光客の方が増えてきているのかもしれません。
この写真はISO3200なのですが……昨年の4月にK-1のテストで登った時は、25600で撮っても、まだまだ写真が暗かったのです……
ほんと、かがくのちからってすげー!という感じですね……。あ、四ツ辻から京都市内を見下ろすと、任天堂の本社が見えています。
山頂まで登った所で、今度は下りです。そしてやはり安心・安全・信頼のLED光。いやまぁ、全ての区間に照明があるわけではなく。ほぼ真っ暗な区間も数多く残ってはいるのですけれどね……
風情……雰囲気……。いやその怪我人が出て、夜間参拝禁止になるよりはずっと良いのですが……うーんうーんうーん……
……と思ったら、ちゃんと白熱灯が残っている場所もありました!こちらは伏見稲荷・三之峰、白菊大神でございます!ちなみに自分が一番好きなポイントでございます。
この黄色というか橙色がかった照明に照らされた夜の稲荷を見るとホッと致します……。そうそう、これでこそ夜の伏見稲荷なのでございます!
一応、三之峰~四ツ辻までの区間については白熱灯が残っている感じでございました。それともっと山の下の方にも、いくつか残っていましたね。
……ですが、それらもいずれはLEDになってしまう……のでしょう……
熊鷹社から少し下った所にあるスポットです。鳥居乱舞。ここで超広角を使うのが恒例です。
ちなみにバッテリーは完全にレッドの状態でして、ライブビューを使うと電源が落ちます。ダメです。K-5ⅡsやK-1では秋季冬季でもバッテリーの残量を全く気にしたことがなかったのですがKPはダメでした。
この写真も本当はチルト液晶によるライブビューで撮りたかったのですが、超ローアングルからヤマカンで構図を取っております。ちなみに感度はISO12800でございます。シャッタースピードは1/5。手振れ補正が優秀だということで、ここはひとつお願い致します。
この後。もうバッテリーが本格的にダメになりまして。本当はもっともっと撮って周りたかったのですが、バッテリーを少しでも温存すべく、ボディからバッテリーを取り出してポケットで温めながら下っておりました。
……そして夜の伏見稲荷のメインイベントでございます。
夜の千本鳥居。ISOは25600、シャッタースピードは1/6。もう色々とギリギリな写真でございます。これも欲を言えばチルト液晶&ライブビューで撮りたかったのですが、バッテリーは完全アウト。というか、千本鳥居を撮っている最中で、見事にバッテリーがゼロになりました。お疲れ様でございました……
……総撮影枚数は350枚といった所です。公称の420にはわずかに届きませんでした。春先とかなら大丈夫なのかもしれませんけれど。
と言うことで、いつも撮り慣れた場所でペンタックスKPを使用してみた感想ですが。本当に「気軽に持ち出せる軽量小型のスナップシューター一眼レフ」という感じでしょうか。使用用途にも拠るとは思いますが、K-1やK-3、はたまたK-5あたりを使用している方が、KPをメイン機として一台のみで運用するのはつらいものがあります。メインとするなら、少なくとも予備バッテリーかバッテリーグリップは必須ですね……
画づくりに関しては、ここ5年ぐらいのペンタックスの中では最もクセがあると感じます。乗りこなすのが難しく、使いこなして自分の思い通りの画をjpeg撮って出しで出そうとするなら、それなりの知識と技術と試行錯誤が必要になってくるのではないでしょうか。
キヤノンなんかは、一眼レフは50万円級の上級機から5万円前後のエントリーモデルまで一貫して同じような画が出てくると言います。一方でニコンは上級機と入門機では全く違う画が出てくると言います。ペンタックスも割と機種ごとに違う画が出てくるなぁ……と感じる今日この頃です。それだけ試行錯誤しているということではあるのでしょうけれど……
これも個人的な所感なのですが。ペンタックスKPの仕様が発表された時、「ひょっとしたらK-1の存在意義がなくなるのではないか……?」と思いました。ですが、割とそれは杞憂な感じではありました。結局のところ、フルサイズならではの画素ピッチの大きさと、そこからくる高感度・ダイナミックレンジ・色再現など。K-1の持つアドバンテージはかなり大きい印象です。
とは言えKP。まだ使い始めて900枚弱しか撮影できてはおりません。カッコいいデザインとプレミアムな質感のペンタックスKP。これからももっとKPを持ち出して、使いこなせるようになっていきたいと思います。
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