ペンタックスK-1というカメラがあります。これは2016年4月28日にリコーイメージングから発売された一眼レフカメラでして、慧が4年以上に亘って使い続けているカメラであります。
カメラを趣味にしている方はよくご存知かと思いますが、K-1の特徴としては35mm判、いわゆるフルサイズと呼ばれるフォーマットを採用しているという点があります。要するに大きくて高価なカメラだけれど、その代わりに画質が良いカメラであるということです。
フルサイズ規格のデジタル一眼レフを作るというのはペンタックスにとっては悲願であり、古くは2000年9月にそのプロトタイプとなる「K-1」が発表されました。
※プロトタイプのペンタックスK-1。今でもイベントなどで時々展示が行われます。
プロトタイプのK-1はオランダ・フィリップス社の600万画素CCDイメージセンサーを搭載した、バッテリーグリップ一体型のカメラでした。聞く所によると、いつ発売してもおかしくはないぐらいの完成度だったそうですが、2001年10月にはその開発が凍結されてしまいます。
当時はまだまだデジタルカメラそのものが黎明期でもあり、フィルムの代わりとなるイメージセンサーは高価な製品であったと聞いています。そんな中、35mm判という巨大なイメージセンサーを搭載する……となると非常に高価になって、商売として成立させるのが難しい……というのが発売されなかった原因なのではないでしょうか。
実際、京セラが2002年2月1日にコンタックスNデジタルというフルサイズカメラを発売しますが、2005年に京セラはデジタルカメラ事業から撤退の憂き目に遭ってしまいます。
一方で2005年8月22日、キヤノン初のフルサイズフォーマットであるEOS 5D発売を皮切りとして、続いて2007年11月30日にニコンがフルサイズフォーマットのD3を発売、さらに2008年10月23日にはソニーがα900を発売。各カメラメーカー間によるフルサイズ一眼レフカメラの発売競争が激化。高性能高画質なフルサイズカメラを擁するキヤノン・ニコン・ソニーが三大カメラメーカーとして業界全体を牽引してゆくこととなりました。
そんな中、真っ先にフルサイズフォーマットの試作機を発表したはずのペンタックスはと言えば、その後も長らくフルサイズフォーマットへは参入せず、フルサイズの半分の大きさであるAPS-Cという規格を採用したカメラを発売するばかり(とは言え、今も昔もAPS-Cがデジタル一眼の主流)。その代わり、2010年6月11日、645Dというミドルフォーマット(中判)カメラを投入します。この645Dはフルサイズよりもさらに一回り大きなイメージセンサーを搭載し、画素数は4000万画素と、当時としては破格の高画素機として君臨することとなりました。
2014年6月27日には5000万画素の後継の645Zを発売し、製造が追いつかない程のヒット商品となります。ですが、どうしても645シリーズのような中判カメラはボディもとても大きく、その値段もまた80万円と非常に高価なものであったことはもちろん、もう少し手頃なサイズと価格であり、フィルム時代のレンズをそのままの画角で使用できるフルサイズカメラが欲しい……という声が数多くありました。
「ペンタックスがフルサイズカメラを開発している」という噂は古くから続いており、出ては消え、消えては出て……を繰り返していたのですが、その噂が本格化したのは2012年の秋頃のことでした。当時の噂としては製品開発の責任者の方が「フルサイズカメラの発売を検討している」と述べるに留まっていたのですが、ここで一気にペンタックスフルサイズ登場への期待が高まったように記憶しています。慧もまた、当時発売されたK-5IIs(11万円)を予約しつつ「発売されたら絶対にペンタックスフルサイズを買う!」と心に決めたものです。
……とは言え。そこからが本当に、本当に長かったのです。出るのか出ないのか、そもそも作っているのか作っていないのかよく分からない状況が延々と続きました。キヤノンやニコンが次々に新作フルサイズ一眼レフカメラを発表し、ソニーに至っては新時代のフルサイズミラーレスカメラまで登場させてくる。そんな華やかな他社ラインナップを指を咥えて見ているしかなかったペンタックスユーザー。中には他社へと乗り換えてしまう者も多かったのです。かくいう自分も、待ちきれなくてニコンD700を買っちゃったりもしたのですが(汗)
そして……ペンタックスがようやくフルサイズカメラの開発発表を正式にアナウンスしたのは2015年2月のことでした。その内容としては「2015年中の発売を目指している」というものだったのですが……まあ……2015年も終わりに近づいた頃に延期がアナウンスされ……2016年2月17日に発売が発表されたものの発売日は確定せず。4月12日になってようやく発売日が正式決定、かくして4月28日に発売となりました……
慧はと申しますと、事前のリーク情報を信じて2月17日の午前10時前からパソコンの前で待機。発売が発表された15分後には予約を完了させました。とは言え、その時は発売までさらに2ヶ月以上待たされるとは思いませんでしたし、予約の数週間後、色々あって死にかけて救急搬送されたりもしておりました。
病院に担ぎ込まれて処置台に載せられて、「バイタル、ショック出てます!」「ルート(点滴)取って!ダブルで、早く!」「もう1リットル出血してる!」「輸血用血液、ありません!」「ダメだ。転院させるぞ!救急車用意!万一に備えて俺(医者)も行く!」『ピコーンピコーン(明らかにおかしい心モニター音)』……などなどの大騒ぎの中、「ああ……ペンタックスK-1、使いたかったなぁ……」なんてぼんやり考えておりました。
幸い命は取り止めまして、一週間で退院できました。ただ、退院直後に行われたペンタックスK-1の発売イベントではまだまだ貧血が酷く(最終的に3リットル近く出血して、輸血したのは1リットル弱)、クラクラフラフラしながら会場である大阪・堂島リバーフォーラムから帰宅したのを覚えています。
まあ……そんな私情は差し引いたとしても、ペンタックスフルサイズ・K-1が発売されるまで、何年も何年も待ち続ける羽目になり、もやもやもんもんとした日々を過ごし続けてきた訳です。長かったのです。とにかく本ッ当に長かったのです。なので実際にきちんと手元に届いた時は感動も一入なんてものではありませんでした。……最近もペンタックスは似たようなことやってるような気がしなくもないですが。
発売当時の価格はカメラ本体のみで確か25万円。同時発売だったDFA28-105mm F3.5-5.6WRというレンズ(上の写真に写っているレンズ)とセットで購入して33万円と少し……だったと記憶しています。購入にあたっては、大阪にある八百冨写真機店様というペンタックス・リコーイメージングを応援していることで有名なお店で買わせて頂きました。プロトタイプのK-1を実際に触れる機会を頂けたのも、八百冨様主催のイベント(飲み会)でのことです。
そしてK-1が届いた翌日には早速京都の伏見稲荷へ試写に行っておりました。
伏見稲荷、千本鳥居にて。はじめにこのショットを得た時「これは凄い」と思わされました。一見すると何てことない画に思えるかもしれません。ですがこの場所でこういう写真を撮ると、多くのカメラは補色の画像処理が入ってしまい、鳥居の朱色は色が抜けて薄くなってしまい、代わりに石畳はブルーが被ってしまいがちなのです。実際、2012年発売のK-5IIsもそうでしたし、最近の他社機ではまだ青被りが起きることもあります。
それがオートホワイトバランス任せで何となくシャッターを押しただけでこの色合いとこの階調が得られるということ。素直に衝撃でした。K-1に搭載されたという8万6000画素のRGB測光センサーの賜物でもありますが、この鮮やかな色再現。本当に素晴らしい画づくりです。
伏見稲荷、四ツ辻にて。夕陽を見る人々。K-1に搭載されたイメージセンサーはソニー製の3600万画素CMOSだと言われています。ニコンが同じセンサーを搭載したD800シリーズで、フルサイズ初となる3600万という高画素の世界へと踏み込んでいったのは2012年のこと。あれは衝撃的な出来事でした。
高画素の恩恵と言えば、真っ先に思い浮かぶのが解像力だと思います。ですが個人的には、それ以上に大きなメリットは階調表現だと思うのです。つまりグラデーションの細かな変化ですね。K-1においては空を撮影した時の雲の微細な濃淡の表現と再現が本当に素晴らしいのです。自分が長らく使ったK-5IIsに比べると圧倒的ですね。
伏見稲荷、三之峰。白菊大神。そしてペンタックスK-1の性能の高さの一つに高感度耐性があります。暗い所で写真を撮る際、どうしてもISOと呼ばれる感度を上げなければならないのですが、これは上げすぎると画面上にノイズが乗ってしまうというデメリットがあるのです。
ペンタックスは古くから(一部機種を除いて)高感度に強く、暗所でも比較的クリアな画が撮れるメーカーであり、カメラでした。自分が最初の一眼レフとしてペンタックスを選んだのも、それが最大の理由です。
伏見稲荷、熊鷹社附近にて。伏見稲荷は山ひとつが神社となっており、昼間でも薄暗い場所が多く、日中でもISOは400や800を使用するシーンが多々存在します。
普通のカメラならばISOは1600を超えてくるとノイズだらけの写真が出てきてしまうのですが、K-1においてはISO6400でもそれなりに普通の画が撮れてしまいます。さらに非常に優秀な手ぶれ補正も加わって、最強の夜景カメラのひとつに仕上がっておりました。
K-1の最高感度はと言えばISO409600。それまでの最高値だったニコンD4S(1600万画素)やソニーα7S(1200万画素)と同一の値となりました。とは言え、409600で写真がゲシゲシ撮れるという訳ではなくて、個人的には6400あたりが限界ですね……
本来なら高感度は、画素が増えれば増えるほど弱くなりますので、3600万画素センサーでこの高感度なら極めて優秀な値であります。最近はニコンがD5やD6で300万超えという数値を叩き出してきたりはしていますけれども。
そしてペンタックスK-1の優れたポイントの一つにダイナミックレンジがあると思います。ダイナミックレンジとはつまり、明るい箇所と暗い箇所を同時に捉えられる性能……ということです。スマートフォンなどで、明るい部分が白く飛んでしまったり、逆に暗い部分が黒く潰れてしまうのは、このダイナミックレンジの狭さに起因するものです。
人間の肉眼というものはなかなか優秀で(左右に目があるとか、脳で合成処理が行われているとか色々あるでしょうけれど)、人間の眼が捉えられるダイナミックレンジと比べると、デジタルカメラはまだまだその域に達してはいません。
ダイナミックレンジはEVと呼ばれる単位で表され、人間の肉眼はおよそ16.5EVだと言われています。対して一般のデジタル一眼カメラでは11〜12EVがせいぜいなのですが、K-1においては14EVを達成しています。これは、当時はもちろん現代の2020年においても非常に高い数値なのです。
ペンタックスは他社に比べるとそのシェアは非常に低く、おそらく現在では5%あるかないかといった所だと思います。使用されている部品も、常に最新のものを使用することができず、一周遅れとなっていることがほとんどです。イメージセンサーひとつとっても、他社はとっくに4000万画素や5000万画素の領域に踏み込んでいます。
その代わりペンタックスはイメージセンサーのポテンシャルを引き出すことに非常に長けており、同一のイメージセンサーを用いていても、より高感度やダイナミックレンジに優れたチューニングを施すことを得意としているのです。
「鮮やかな色再現」「優秀な高感度耐性」「広いダイナミックレンジ」。この三点の素晴らしさは、まさに「風景のペンタックス」とフィルム時代に謳われたペンタックスの面目躍如といった所であり、最強のフィールドカメラたる所以でもあります。自分がペンタックスを長らく使い続けている最大の理由はまさにここにあります。そしてこの三つをして「画質」と言い換えてしまっても問題はないでしょう。
2017年1月、雪景の清水寺。冴え渡るような鮮やかなブルーと、雪と雲のホワイトの階調表現。まさにペンタックスだからこそ撮影できた写真です。レンズはシグマの超広角を使っていますが……
古今東西。こんな写真が撮れるカメラが果たして他にあるのか……。なお、この時の清水寺の写真をTwitterに投稿した所、K-1で撮影した渾身の一枚はほとんど注目されず、使い古したスマートフォン(4万円)で撮影した写真が万を超えて拡散されてバズるという事態に……。ま、世の中そんなもんですよね(死んだ目
雪降る清水道にて、開店を前に慣れない雪かきをする京の人々。ペンタックスの強みとして、その画質の他に悪天候への強さがあります。
防塵防滴……と呼ばれるのですが、カメラ内部にシーリングが施されており、雨や砂が侵入しづらいということですね。この写真を撮影した京都は一日中、雪と風が吹き付けておりまして、雪まみれになりながら何時間もK-1で写真を撮り続けていたのですが、カメラ・レンズともに何のトラブルにも見舞われませんでした。
平安神宮大鳥居前、琵琶湖疎水。悪天候での撮影については、この時の京都の雪の他にも、雨の日の広島・呉や、雨の日の長野・上高地でずぶ濡れになりながら一日中撮り歩いたことがありますが、やはり問題は一切ありませんでした。
ただ、これまでに雨天で一度も問題が起きなかったかと言われると、そういう訳でもありません。2020年、イタリアのローマへ旅行に行った際、これまたローマが雨でして……その中で撮り歩いた所、オートフォーカスが正常に動かなくなりましたね……。結論から言えばボディへの水の侵入による基盤の故障でした。メイン基盤交換で5万ぐらい修理に掛かった気がしますね……
他にはK-1ではなくK-5Ⅱsを使っていた時代ですが、雪の京都での撮影でDA18-135mmのオートフォーカスが動かなくなったことがあります。完全に乾いたらまた使えるようになったのですが、テレ端でのみAFが効かなくなるという。
サービスセンターでチェックしたら、レンズ側に水分が侵入した模様です。これは防滴のシーリングをくぐり抜けて水が入り込んだと言うよりは、結露によるトラブルであった気がします。以来、雨や雪の撮影では暖かい部屋に入る時に結露させないように気を使って取り扱っております。
他にK-1そのもののトラブルとしては、購入してから1年か2年が経った際、モードダイアルを操作してもモードが切り替わらなくなった……というのがあります。どうもこのトラブルはK-1で頻発していたようで、サービスセンターに持ち込んだ所、保証期間は過ぎていたと思うのですが、初期不良的な扱いで修理して頂きました。
4年以上、K-1を使用して故障やトラブルが起きたのはその2回だけですね。
京の奥座敷と呼ばれる貴船、その川床。鮮やかなグリーンとブルーは本当にペンタックスならではです。かつてのペンタックスは鮮やかなグリーンを出そうとするあまり、画面全体にグリーンが被ることがありました(人間の肌が緑っぽく写ったり……他社だとマゼンタっぽくなる)。
2013年のK-3以降は画づくり(というよりRGB測光センサー採用によるのかもしれません)が少し変わり、グリーンのバランスが良くなりました。その代わり、他社のように少しマゼンタっぽさが出るようになりましたね。それでも風景を撮らせたならば、ペンタックスの右に出るメーカーはいないでしょう。
「カメラ沼」という言葉があり、それは終わりのない世界だとよく恐れられています。ですが自分の場合はK-1が気に入りすぎてしまい、K-1以外のカメラでは満足できない身体になってしまいました。本当に、他に欲しいカメラというものがぱったりと無くなってしまったのです。それはそれで嬉しいような、同時に寂しいような、そんな贅沢な悩みに直面しています。
2017年2月にペンタックスKPが登場した時は、そのデザインに惚れ込んで買ってしまったのですが、画づくりという面で今ひとつ満足できませんでした。KPが悪いのではありません。自分も最初の一台としてどのペンタックスを薦めるかと言われると、間違いなくKPを推挙します。K-1が良すぎるのです……
琵琶湖疎水・白川分線「哲学の道」。2018年4月20日にはK-1のマイナーチェンジモデルであるK-1 MarkⅡが発売されます。それに伴い、旧来のK-1ユーザーには54000円でMarkⅡ仕様に改良できるアップグレードサービスが実施されることになりました。
このアップグレードサービスはカメラを買い換えるのではなく、ボディをそのままに中身だけを後継機種と同等にグレードアップできるという前例のない試みでした。そして5月21日、サービス受付開始スタートと同時に申込が殺到!あっと言う間に予約枠が埋まってしまう事態になりました。なお、慧はこの日もパソコンの前に待機して即座に申込みましたので、おそらく第一陣として予約できたと思います。ちなみにメーカーの予想を遥かに上回る申込があり、基盤が足りなくなってしまったそうです(笑)
このサービスは後にグッドデザイン賞を受けることになったのですが、54000円という価格でボディをオーバーホール、点検し、メイン基盤を交換する……というのはメーカーにとって利益が出ていたかどうかは非常に怪しいようです。市場の相場との兼ね合いを考えると、それ以上に値上げすることは難しかったようです。何にしても、ペンタックスの真摯で愚直なものづくりの姿勢が垣間見える出来事でした。
アップグレード前後の違いとしては、2016年に発売されたK-70や2017年のKPで先行実装されていたアクセラレータユニットと呼ばれるチップが搭載され、高感度の画質が向上。K-1Ⅱは最高感度809600にまで到達しました。とは言え、もともとの高感度耐性が優秀だったので、劇的に画質が良くなったとは感じませんでした。
他にはリアルレゾリューションシステムという……まあ……変態機能がありまして。これは2015年のK-3Ⅱから実装されている機能で、写真を撮影する際、画素ひとつずつを正確にずらして4枚の写真を撮影。より多くの光情報を取り込んで画質を劇的に向上させる(解像感が2倍近くになる)というものなのです。
ソニーやオリンパスにもハイレゾショットと呼ばれる超解像の合成機能があるのですが、それらとは少しコンセプトが違い(そちらは画素数そのものを増やす機能)、シグマ社のフォビオンセンサー機を疑似的に再現するというもので、あくまで画素数はそのままで、色彩情報を豊かに、解像感を向上させるというものでした。。
ただ、その特性上、三脚が必須のシステムだったのですが、それを手持ち撮影で可能にするという離れ業をやってのけたのがK-1 MarkⅡのリアルレゾリューションシステムⅡなのでした。自分もテストしてみたのですが、どうやったらこんな制御ができるんだとぶったまげましたね……
K-1を購入してからというもの、色んな国、色んな町を共に歩きました。春夏秋冬の京都はもちろん、奈良、東京、長野、東北、瀬戸内、沖縄……。ロンドンで大英博物館を見学し、グリニッジを訪れ、テムズ川を歩いたこともあれば、パリでルーヴルを巡り、夜のセーヌ川を歩き、ヴェルサイユに驚嘆し、モン・サン・ミッシェルに心奪われたこともあります。
ドイツではフランクフルトとミュンヘンに滞在し、ライン川をクルーズしてローレライを眺め、ハイデルベルクを訪れ、ローテンブルクやネルトリンゲンの城塞都市を巡ったり、ノイシュヴァンシュタインを目指してロマンチック街道を旅しました。
イタリアではミラノ、ヴェネツィア、フィレンツェ、ローマ、ナポリ、カプリ島、ポンペイ、アマルフィ、アルベロベッロとイタリアを縦断したこともあります。はたまた砂塵舞うエジプトではカイロ、ギザ、サッカラ、ダハシュール、アスワン、ルクソール、メンフィス、アブ・シンベル……。ナイル川をクルーズしたり、蜃気楼の立ち昇る砂漠の一本道を地平線の果てまで旅したり……
本当に色んな所へ行きました。そして、その傍らには常にペンタックスK-1がありました(それとリコーGR/GRⅢ)
もちろんK-1に不満な点がない訳ではありません。もっとレスポンスが欲しいとか、もっとオートフォーカスを速くして欲しいとか、まあ色々と……。ですが自分の中では、きっとこれからもK-1を超える写真機は現れないと思います。もしK-1を超える写真機が出現するとすれば、それは次世代のK-1だけでしょう。
カメラがデジタルの洗礼を受けるようになって20年。今やミラーレスの台頭が著しく、かつてレンジファインダーが辿ったように一眼レフはその第一線から身を引こうとしつつあります。自分自身、もはや画質や機能面や性能面において一眼レフにメリットはほぼなく、伸びしろも極めて少ないと感じています。
ニコンキヤノンの二大メーカー時代は終わりを告げ、長い年月をかけてミラーレスを育て続けてきたソニーがカメラ界の覇者になる日は遠くないだろうと感じています。そしてその頃、ペンタックスは何周遅れのロートルなカメラになっているのか想像もつきません。
ですが、ペンタックスが今の画づくりを続けてくれる限り、自分はペンタックスを使い続けると思います。逆にペンタックスからその画づくりが失われた時は、自分がソニーのミラーレスカメラへ移行する時でしょう……。正直、ソニーのα7シリーズには(防塵防滴性能を除いて)文句のつけようがありません。スマートでスタイリッシュ、高機能で多機能……現代のカメラの最適解でしょう。
武骨で不器用、愚直で馬鹿正直なペンタックスK-1。これからも長く使い続けていきたいものです。
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